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オーガスタ 緑に秘められたエピソード

野村ホールディングスがスポンサー契約を結ぶ松山英樹選手が、日本人男子で初となるメジャー制覇を達成したのが、2021年の「マスターズ・トーナメント」でした。2年ぶりの優勝をめざす今年の大会は4月6~9日の4日間、アメリカ・ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ(GC)で開催されます。4大メジャーで唯一、同じコースで開催され続けている大会はもう間もなく。そこで、知っておけば本番がより楽しめる豆知識をご紹介します。

メンバーと歴代優勝者の証「グリーンジャケット」

一昨年大会の優勝セレモニーで、松山選手が満面の笑みで着せられたシーンを覚えている方も多いでしょう。
このグリーンジャケットは、元々はマスターズ観戦に来た人が困ったことがあった際にメンバーを見つけやすいように、との目的で作られました。第1回のマスターズが開催されたのは1934年。グリーンジャケットは1937年大会からコースのメンバーが着用するようになりました。現在のように優勝者に贈呈されるようになったのは1949年からで、サム・スニードがその第1号でした。

グリーンジャケットを着用できるのはメンバー、マスターズの歴代チャンピオンともにオーガスタ・ナショナルGCの中のみ。外に持ち出すことはできません。ただしマスターズの優勝者だけは、各種のイベントなどでお披露目することができるようにとの配慮で優勝したその1年間は持ち出すことが認められており、翌年の大会時にコースに戻すことになっています。

これをうっかり忘れてしまったのが南アフリカのゲーリー・プレーヤーでした。1961年大会で初めてアメリカ人以外のチャンピオンとなると母国に持ち帰ったのですが、翌1962年の大会時に持ってくるのを忘れてしまいます。どんな"処分"がされるのか…と思いきや、マスターズの共同創始者であるクリフォード・ロバーツ氏は「公の場に持ち出さないように」と笑みを浮かべながらたしなめただけだったそうです。ちなみに連覇を狙ったプレーヤーは、プレーオフの末にアーノルド・パーマーに敗れています。

素材は当初、厚手のウールでした。ところが選手が半そで1枚でプレーできる気候の下では暑すぎる、との声が多くなったために近年はトロピカルウールに変わっています。緑色のカラーは、見つけやすいと同時にコースの芝生や木々の中で目立ちすぎないように、との理由で決められました。

歴代優勝者のジャケットは「チャンピオンズ・ロッカー」で保管され、セレモニーでは前年のチャンピオンが優勝者に着せるのが恒例。連覇の際にはマスターズ委員長に着せてもらいます。表彰式では優勝者に体型が近いメンバーのモノが使われ、その後採寸して本人用のものが製作されます。

神様に祈ってプレーするから「アーメン・コーナー」

11~13番ホールがこう呼ばれるようになったのは、風がわかりにくいことが理由として挙げられます。クラブハウスより約50メートルも低い「谷底」のような位置にある3ホールは、風が舞うように吹くことがしばしば。11番と12番はほぼ同じ向きにプレーしますが、すぐ近くにある両ホールのグリーンのピンフラッグが真逆の向きになびいていることは珍しくありません。特に12番パー3はグリーンの手前が池でどのクラブで打つかの判断を迷わせます。2020年にはタイガー・ウッズが池に3回入れて「10」を叩いたこともありました。続く13番は2打目でクリーク(小川)のすぐ先にあるグリーンを狙うには覚悟を決める必要があるパー5。最後は「アーメン」と幸運を神に祈ってプレーするしかない、というのが由来です。

「ガラスのグリーン」の下には、こんなモノが

輝くような緑が美しく、かつボールの転がりが非常に速い「ガラスのグリーン」とも称されるオーガスタ・ナショナルGCのグリーン。その下にはパイプが張り巡らされています。これは「サブエア・システム」というもので、暑い時期には冷風を、寒冷期には温風を芝生の根の部分に送ることで最適な温度に保って成長を促すようになっています。逆に大雨や湿度が高い時には吸引モードの運転に切り替わり、水を排出することで根が腐ってしまうことを防止しています。
世界一美しいとも言われるグリーンは、このようにしてトップコンディションが保たれています。

文:森伊知郎

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