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Preferred Networksとの共同研究論文が、人工知能分野の国際学会AAAIおよびAAMASで採択

~AIなどの先端テクノロジーを活用したファンドの設定を目指す~

2020年12月21日

野村ホールディングス株式会社

野村アセットマネジメント株式会社

野村ホールディングス株式会社(代表執行役社長 グループCEO:奥田健太郎)および野村アセットマネジメント株式会社(CEO兼代表取締役社長:中川順子)は、2019年10月に株式会社Preferred Networks(代表取締役CEO:西川徹、以下「PFN」)と運用手法の高度化に資する共同研究を開始しており、その研究成果の一部は、人工知能分野で最も権威ある学会の一つであるAAAI(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)およびAAMAS(International Conference on Autonomous Agents and Multiagent Systems)の年次大会において採択されました。今後、こうした研究成果を活用したファンドの設定を目指します。

資産運用業界ではこれまでも、機械学習やデータサイエンスの観点から、従来の手法に捉われない新しい運用手法の研究開発が積極的に行われてきました。一方で、機械学習に関しては毎年膨大な研究成果がさまざまな学会等において発表されており、資産運用実務で取り入れられている手法はその中のごく一部にとどまります。また運用パフォーマンスの更なる向上のためには、手法として先端性があるだけではなく、実務の課題を深く理解し、その課題解決に最も適切な手法が厳選される必要があります。

野村グループは長年、金融工学やデータサイエンスの知見に基づき、運用実務上の課題を解決するためのさまざまな定量手法の開発に取り組んできました。一方、PFNは自動運転、がん診断等さまざまな分野において機械学習や深層学習等の最先端技術を適用し、各産業特有の事業課題の解決に取り組んでいます。

野村グループは、今回の共同研究の成果をはじめ、AIなどの先端テクノロジーを最大限活用したファンドの設定に向けてPFNと協議を開始し、お客様に対してより一層の投資機会と付加価値を提供していきます。

AAAIおよびAAMASは、世界中の著名な大学や研究機関等に在籍するトップクラスの人工知能研究者の多くが競って研究論文を投稿しており、採択の難易度が極めて高いことで知られています。これらの本会議において日本の金融機関による発表自体が極めて稀であり、3社の共同研究の成果が採択されたことは、学術的な価値が広く認められたことの証左です。なお、マルチエージェント・システム(MAS)の研究で最も権威あるAAMASにおいては、採択が最も難しいとされる「Full Paper」(口頭発表あり)として採択されました。

【ご参考】今回採択された論文について

1. "Deep Portfolio Optimization via Distributional Prediction of Residual Factors" (AAAI)

株価に代表される金融商品の価格時系列データ(以下、金融時系列)は一般に、金融市場全体に共通して説明付けられる要因と、銘柄固有にみられる要因に区別して考えることができます。本研究では、銘柄固有の要因(残差リターン)を基準にポートフォリオを構築することによって、特定の相場局面に依存しない、より安定的な運用ができる手法を提案しています。残差リターンの予測は深層学習によって行いますが、モデルの構築にあたっては、金融時系列に見られる次の2つの特徴を加味しています。一つが、価格の変動性(ボラティリティ)が高い(または低い)局面では、ボラティリティが高い(低い)相場が暫く継続する傾向があること(ボラティリティ・クラスタリング)。もう一つが、金融時系列をさまざまな時間スケールで見た時に共通の特徴が見受けられる傾向があること(金融時系列のフラクタル性)。これら2つの特徴を捉えることができる独自の深層学習モデルを構築し、そのモデルの予測から構築されたポートフォリオの収益性を実際の市場データを用いて検証しました。

2. "Trader-Company Method: A Metaheuristics for Interpretable Stock Price Prediction (AAMAS)

金融市場の価格形成に影響を与える要因は、日々生じる経済事象や市場参加者の思惑等を背景に時々刻々と変化し、そのため最適な予測手法自体も変化していきます。本研究では、このような金融市場の性質に注目し、市場の変化とともに予測手法自体をダイナミックに変化させていく手法(Trader-Company法)を提案しています。この手法ははじめにさまざまな種類の価格予測アルゴリズムそれぞれを一人の仮想的なトレーダー(Trader)として大量に生成します。次に、それらトレーダーの集合体を仮想的な会社(Company)とそれぞれ見立てて、会社は、市場の変化とともにトレーダーの予測手法を評価しつつ、評価が低いトレーダーを解雇し、新たな価格予測アルゴリズムを持つトレーダーへの入替を行います。最後に複数のトレーダーの予測手法の組み合わせによって将来価格の予測を行います。単一のアルゴリズムではなく、複数のアルゴリズムの適合的な組み合わせで予測を行い、モデル全体の表現力を高めました。また、各アルゴリズム(Trader)が予測全体にどの程度寄与しているのかを可視化し、価格予測プロセスについての説明力・透明性を向上させるとともに、本手法の有効性の検証を実際の市場データを用いて検証を行いました。

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