期待される2014年後半のアベノミクス相場の再来

巻頭言2014年夏号

野村證券金融経済研究所 シニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザー 海津 政信

前回、2014年春号の巻頭言で、日本の株式市場が3月以降も冴えないのは、アベノミクスに対する投資家の期待が後退しているためで、その期待を呼び戻すことが欠かせないと述べた。あれから3か月が経過し、その期待をある程度呼び戻すことが出来たように思われる。

それは、安倍政権が市場の声にも耳を傾け、6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2014)に法人税改革を盛り込み、また、成長戦略にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革やコーポレートガバナンス(企業統治)改革等を盛り込んだことによる。具体的に見ていこう。

まず、法人税改革である。骨太方針には、「数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す。この引下げは来年度から開始する」と明記された。財源問題は未決着ではあるが、課税ベースの拡大とともに、アベノミクスの進展による法人税収の上振れも一定程度活用することになろう。そして15年度から2%ずつ3年間に亘り下げて、17年度でドイツ並みの29.5%まで下げることが期待される。

ついで、GPIF改革であるが、日本銀行が目指す2%の物価目標が達成されると長期金利が上昇する一方、長期の利益成長率が高まることが予想される。これに適切に対応するためには、運用ポートフォリオに占める国内債券比率を下げ、国内株式比率を上げることが求められる。また、金利の高い海外債券や利益成長力の高い海外株式の比率を高めることも重要だ。すでに運用委員会の人事は一新されており、秋までには基本ポートフォリオの変更が行われよう。

そのほか、上場企業に社外取締役の選任を促し、企業経営により高い企業価値向上を求めた昨年のガバナンス改革に加え、新たに「コーポレートガバナンス・コード」の策定を求めるガバナンス強化策も盛り込まれた。規制改革関連も含め総じて、アベノミクスへの期待を呼び戻すものになったと言えよう。

加えて、14年後半の株式市場を考える上で重要なのは、異常寒波の悪影響で1-3月に急減速した米国経済の動向である。すでに、4月、5月の経済データにより、米国経済が雇用拡大を伴い好転しつつあることは明白で、年後半の実質GDP成長率は、年3%を上回るものと予想される。

つれて、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は秋までに量的緩和政策を終了させ、15年後半にはゼロ金利解除に向かうとの方向性が見えてこよう。米ドル金利は緩やかに上昇に向かい、日本銀行の量的緩和政策継続と合わせ、為替市場では緩やかにドル高、円安が進もう。これは、輸出企業の利益、時価総額が大きい日本株式の上昇に資するものと判断される。

ウクライナ、イラクなどの地政学リスクによる天然ガス、原油価格の上昇懸念に留意は必要だが、14年後半の株式市場において、一旦薄れかかったアベノミクス相場の再来が期待されると言えそうだ。

手数料等やリスクに関する説明はこちらをご覧ください。