上場種類株式の株価指数における取扱い
論文2008年夏号
野村證券金融工学研究センター 徳野 明洋、太田 紘司
目次
- I.はじめに
- II.種類株式の上場と株価指数
- 種類株式の制度整備
- 種類株式の上場制度
- 海外での指数組み入れ状況
- 指数組み入れの検討課題
- III.種類株式に適応した指数ルールの研究
- 指数ルール再整備の必要性
- グローバル・インデックスの比較検討
- 指数ルール収斂の背景
- 日本株での指数組み入れの実証分析
- IV.おわりに
- 定量的アプローチの有効性
- 残された課題
要約と結論
- 種類株式の制度整備が進み、無議決権優先株等の上場の動きが顕在化し始めている。多様な種類株式の上場が増加すれば、投資家の銘柄選択の対象は企業ではなくその企業が発行する証券として捉えられるようになる。しかし、種類株式は主要な株価指数の組入れ対象となっておらず、投資家にとっての投資環境は整っていない。
- 種類株式制度は平成13年11月の商法改正で大幅に拡充され、18年会社法ではその内容について概念整理が行われた。現在、東証では議決権種類株式の上場制度整備が進んでいるが、実質的な上場審査が厳格に行われることが重要である。
- 日本国内には上場種類株式の指数採用実績がほとんど無く、海外の主要取引所指数での採用実績を比較検討した。制度的、歴史的な差異の影響が大きく対応もさまざまだが、多くの国で上場種類株式は指数組入れが前提となっている。
- 株価指数組入れの際には、(1)株式という資産クラスに該当するか否か、(2)コーポレート・ガバナンス上の問題はクリアできているかの2つに配慮する必要がある。
- 海外の種類株式を組み入れている、3つのグローバルベースのスタイル・インデックスにおける指数ルールを検討した。組入基準は証券レベル、大型・小型の判断基準は企業レベル、という点で、ルールの収斂が見られた。割安・成長の判断基準では評価が分かれる。この背景には、ポートフォリオ理論に根ざす合理性がある。
- グローバル・インデックスの検討で得られた知見を活かして、現状の指数運営ルールに仮想の種類株式組み入れルールを持ち込んで試算を行った。必ずしも全ての種類株式が指数構成銘柄足りえるわけでないが、これは時価総額規模、浮動株調整比率、割当比率の観点で投資可能性への配慮をしている結果であり、ルールの一貫性は保たれている。