北米のシェールガス革命と投資視点

論文2012年夏号

野村證券金融経済研究所エクイティ・リサーチ部 横山 恭一郎

目次

  1. I.はじめに
  2. II.非在来型ガスとは何か
    1. 在来型ガスと非在来型ガスの違い
    2. 非在来型ガスの賦存環境
    3. 非在来型ガスの埋蔵量
    4. シェールガス開発で必要な技術
  3. III.非在来型ガス開発のインパクト
    1. 北米での「シェールガス革命」
    2. 非在来型ガス開発が世界の天然ガス生産に与える影響
    3. シェールガス開発が世界の天然ガス貿易に与える影響
  4. IV.シェールガス開発における懸念材料
  5. V.非在来型開発に関連する企業
    1. ガス開発に関連する企業
    2. LNG(液化天然ガス)関連する企業
  6. VI.おわりに

要約と結論

  1. 非在来型ガスは採掘するのに特殊な技術が必要とされる天然ガスを指し、シェールガスは非在来型ガスに含まれている。シェールガスは、近年まで商業化は難しいと考えられていたが、技術革新により2000年代半ばから北米で本格的な商業生産が開始された。その結果、2000年代半ばまで横ばいで今後逓減していくと予想されていた米国での天然ガス生産量は一転大幅な増産見通しとなった。
  2. シェールガスを含めた非在来型ガスの可採埋蔵量は、在来型ガスとほぼ同等の水準で、大きなポテンシャルを秘めている。しかしながら、環境面での懸念を含めたさまざまな制約により「シェールガス革命」は当面は北米限定の事象にとどまる可能性が大きく、世界の天然ガス生産量に与える影響は現時点では限定的と考えられる。
  3. その一方で、北米での「シェールガス革命」は、分断化された天然ガス市場の構造を変えうる可能性がある。輸送コストなどを考慮しても米国産LNGはアジアで高い価格競争力を有しており、米国が2010年代後半に天然ガスの純輸入国から純輸出国に変わるとの見方もある。エネルギーの安全保障が絡み米国がどの程度の輸出量を承認するのか不透明感があるが、米国産LNGのアジア向け輸出が始まれば、アジア市場でのLNG価格や価格決定方式に少なからず影響を及ぼすであろう。
  4. 非在来型ガス開発に直接関連する日本企業として、非在来型ガス田開発に投資している商社などが挙げられる。シェールガスを含めた非在来型ガス開発の進展は、LNG輸送需要の拡大へとつながる。LNGプラン卜関連市場では、プラン卜建設で千代田工建設や日揮などが高い国際競争力を有している。