再生可能エネルギーを担う風力発電
論文2013年新春号
野村リサーチ・アンド・アドバイザリー 高橋 浩明
目次
- I.はじめに
- II.再生可能エネルギー全般の動向
- 固定価格買取制度がスタート
- 再生可能エネルギーの役割
- 再生可能エネルギーの二つの方向性
- III.「発電量の確保」を担う風力発電
- 日本の風力発電の現状
- 陸上風力発電の適地(北海道と東北地方)
- 電力需要地への送電網の強化
- 洋上風力発電は商用ベースの計画開始
- IV.過去のビジネスの失敗経験を生かす
- 失敗要因の考察
- 今後のビジネス成功のために
- V.おわりに
要約と結論
- 日本における風力発電は、世界全体での急激な拡大と比べて出遅れた。しかし、2011年の東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故によって、取り巻く環境は大きく変化している。2012年7月には、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が施行された。まず、メガソーラーへの投資意欲が高まり、風力発電など再生可能エネルギーへの関心は深まっている。
- 日本の将来のエネルギーミックスを考える際、再生可能エネルギーは、地球温暖化対策とエネルギーの安全保障の観点から、重要なオプションと考えられる。発電総量に対する比率を、現状の10%強から30%程度に引き上げる必要がある。
- 再生可能エネルギーは、プロジェク卜規模と導入までの時間のニつの軸でみると、(1)発電量確保タイプと(2)スマー卜コミュニティ融合タイプに分類できる。風力発電は、(1)の代表例で、再生可能エネルギー発電の比率向上のために重要である。
- 日本の風力発電の普及拡大には、陸上風力では、北海道と東北地方の適地での開発強化、洋上風力では、着床式の商用プロジヱク卜の推進と浮体式の技術とノウハウの蓄積がポイン卜となる。陸上風力での適地開発のためには、電力需要地への送電網の強化が必要である。また、洋上風力では、英国のように開発ゾーンを明確にして、中長期の視点で参入事業者の意欲を高めることが課題と考えられる。
- これまで、日本の風力発電ビジネスは不調であった。これを、ベンチャーの事例から考察すると、失敗要因は、(1)ビジネスモデルの選択ミスと、(2)売上計画の未達であった。(2)では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の施行で、リスクがほぼ解消されたと考える。(1)では、風力発電装置、建設工事、メンテナンスなどバリューチェーン全体を結合する事業会社の連合体が望ましい。また、今後は、金融の役割が大きくなり、幅広い投資家の資金を供給する重要な担い手となる可能性がある。