新しいファクター指数とスマートベータ指数の特性分析

論文2015年春号

野村證券クオンツ・リサーチ部 太田 紘司

目次

  1. I.はじめに
  2. II.株価リターンのマルチファクターモデル
  3. III.ファクター指数シミュレーションのセッティング
  4. IV.シミュレーション結果:ファクター指数の分散効果
  5. V.日本株スマートべータのスタイル分析
  6. VI.ファクター指数の利用例:JPX日経インデックス400の時価キャップ(上限)がもたらす影響
  7. VII.おわりに

要約と結論

  1. 資産運用の世界では、TOPIX(東証株価指数)などの時価総額加重型株価指数によるパッシブ運用に加えて、それとは異なる形の株価指数であるスタイル指数、スマートベータ指数の利用という形で、運用手法が重層化している。最近では公的年金でのスマートベータ指数の採用によりそれが注目され、加えて既存の小型、割安といったスタイル指数をモメンタム(過去パフォーマンス)、ボラティリティ(リスク)などの新しいファクターにまで拡張した、ファクター指数シリーズの拡充も進んでいる。
  2. 本稿では、株式リターンを被説明変数とし、代表的なFama-Frenchの3ファクターモデル(市場要因、規模要因、バリュー要因)を拡張した形で、6ファクターモデル(上の3要因、モメンタム、ボラティリティ、クオリティ(質))を作成した。市場要因以外の5ファクターはファクター間の相関が低いことから、ポートフォリオのリスクを抑えるための分散効果の追求という点で利用価値があると考えられる。
  3. このようなファクター指数の使用により、最近、日本でも利用されるようになりつつあるスマートベータ指数の特性分析を行うことができる。日本株のスマートベータ指数に対して、今回のシミュレーションによって得られたファクター指数を用い、重回帰分析によるリスク分析を行った。その結果、指数構成を決定する際にあたり用いられる等ウェート化、財務スクリーニングなどのスマートベータ特有のメソドロジーがそのパフォーマンス、リスクにもたらす影響に関して、本稿の6ファクターモデルはFama-Frenchの3ファクターモデルといった既存の分析モデルより精緻に分析することが可能であると考えられる。
  4. 本稿で紹介した6ファクターモデルは、さまざまな指数、ポートフォリオの特性分析を可能とする。更には、ファクター指数の各ファクターそのものに注目する運用方法も出てくるとみられ、ファクター指数は資産運用の多様化の機会を広げる分析ツールとなるものと期待される。