農林漁業を成長産業へ導く「6次産業化2.0」
論文2016年秋号
野村アグリプランニング&アドバイザリー 仲野 真人
目次
- I.はじめに
- II.6次産業化の現状
- 6次産業化の定義
- 多様化する6次産業化
- 6次産業化が抱えるリスクとは
- 認定事業者の経営状況
- III.農林漁業を成長産業へ導く「6次産業化2.0」
- 現状の6次産業化のままでよいのか
- 従来の6次産業化から進化した「6次産業化2.0」
- 農商工連携との違い
- 農商工連携における課題
- 「6次産業化2.0」は6次産業化と農商工連携の進化版
- IV.「6次産業化2.0」の要諦
- 産地と産業の振興を生み出すためのビジネスモデルの要諦
- 農林漁業者と2次・3次事業者との融合の要諦
- V.事例から見る「6次産業化2.0」
- 株式会社恵那川上屋
- 株式会社エー・ピーカンパニー
- 株式会社エブリイホーミイホールディングス
- 事例から見る「6次産業化2.0」の要諦
- VI.「6次産業化2.0」を拡大させるために
- 2次・3次事業者の既存の仕入れ概念からの脱却
- 農林漁業成長産業化ファンドの出資要件の緩和による活用促進
- 農協が主体となった「6次産業化2.0」
- VII.おわりに
要約と結論
- これまで農林漁業は手厚い補助金や保守的な風土の下、「守られる産業」であった。また、人口減少・少子高齢化が進む中で、国内の2次・3次事業者は生き残りをかけてシェアを奪い合い、安く仕入れるために一部では「買い叩き」等が起こった結果、農林漁業は「儲からない産業」と位置付けられている。
- 農林水産省が推進する「6次産業化」は農林漁業者が生産(1次)だけではなく、加工(2次)、販売(3次)まで行う取組みであり、六次産業化・地産地消法に基づく事業計画の認定件数は2,171件(2016年8月31日現在)となっている。しかし、これまで生産に特化していた農林漁業者が新たに加工・販売に取組むには課題が多く、全ての認定事業者がうまくいっているとは言い難い。
- 6次産業化の課題を克服し、農林漁業を成長産業へ導くためには、農林漁業者が加工、販売に取組むことで農林漁業者の所得向上を目指す従来の6次産業化ではなく、農林漁業者と2次・3次事業との融合による産地と産業の振興を目指す6次産業化の進化版「6次産業化2.0」に取組むべきである。
- 「6次産業化2.0」は従来の6次産業化と農商工連携の進化版であり、農林漁業者と2次・3次事業者が「融合」し、1次から3次までの境界をなくした一気通貫型のビジネスモデルを構築することが求められる。そして「6次産業化2.0」を成功に導くための要諦が「産地と産業の振興を生み出すためのビジネスモデルの要諦」と「農林漁業者と2次・3次事業者との融合の要諦」である。
- 「6次産業化2.0」は今後の農林漁業を成長産業へ導く可能性を秘めており、その「6次産業化2.0」を拡大させるためには、(1)2次・3次事業者の既存の仕入概念からの脱却、(2)農林漁業成長産業化ファンドの出資要件の緩和による活用促進、(3)農協が主体となった「6次産業化2.0」が求められる。