日米完成車メーカーの自動運転技術

論文2017年秋号

野村證券エクイティ・リサーチ部 Anindya Das、桾本 将隆

目次

  1. I.はじめに
  2. II.完成車メーカーの自動運転技術
    1. フォードのモビリティ戦略
    2. GMの自動運転車及びモビリティサービス戦略
    3. 日産自動車:自動運転技術の市販化競争で他社に先行
    4. SUBARU:EyeSightでの成功を自動運転にも広げる戦略
    5. トヨタ自動車:知財や開発力でリード、市販化が待たれる
    6. ホンダ:直近でサブプライヤーやIT企業との協業を積極化
  3. III.世界に先駆け日本で普及が進む自動運転技術

要約と結論

  1. Ford Motor Company(フォード)とGeneral Motors Co(ゼネラルモーターズ、GM)は自動運転技術とモビリティサービスが将来の収益の柱になると考えている。フォードは2021年までに米国の非営利団体SAE Internationalの定義によるレベル4(一定の条件下での完全自動化)の自動運転車を実用化し、これをまず配車サービスやライドシェアサービス向けとして提供し、その後、個人利用向けの自動運転車も提供する計画である。フォードはレベル3(必要に応じて運転手が制御)をスキップするが、GMは自動化のレベルを段階的に達成していく考えで、現在は「Super Cruise」(高速道路で使えるハンドル操作が不要なシステム)など半自動運転技術に重点を置いている。Super Cruiseは17年中に発売されるCadillac CT 6に搭載される予定である。GMがSuper CruiseをCadillac以外のブランドにも搭載するようになれば大衆車モデルで競争力と価格を改善できると我々は考えている。
  2. 日産自動車は、世界の完成車メーカーの中でも、意欲的な自動運転技術の開発スケジュールを公表している。16年8月に既に高速道路での単一車線上での自動運転技術をSerenaで実用化した。消費者の反応は良好で、Serenaは発売後7カ月で受注が前回の全面改良時と比べ34%増加した(うち56%がProPilot搭載)。18年には、高速道路でのレーンチェンジを可能にする複数車線での自動運転技術が導入され、20年には市街地での自動運転技術を市場投入する計画である。また、EyeSightで成功したSUBARU(富士重工業から社名変更)も、17年に単一レーン自動運転、20年に高速道路でのレーンチェンジを実用化する計画で、独自のステレオカメラ技術に磨きをかけている。
  3. トヨタ自動車グループは、自動運転関連の特許を最も多く保有し、多くのプロトタイプを発表するなど、技術開発で先行している。一方、事故のリスクへの懸念から市販化には時間がかかる見込みで、今後の商品化のスケジュールに注目したい。ホンダは、直近で他社との協業やスピード感ある開発に注力する開発組織R&DセンターXを新設し、Google(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)傘下のWaymo(ウェイモ)と協業するなど、異業種との協業を推進している。
  4. さまざまな調査を踏まえて我々が得た結論は、自動運転技術において誰もが認めるトップ企業はまだ存在せず、開発の現段階においては多くの企業にチャンスがある、ということである。一定の条件下での安全な自動運転技術の実用化はすでに視野に入っている。