パワー半導体業界
-電動化により成長加速-
論文2018年4月6日
野村證券エクイティ・リサーチ部 山崎 雅也
目次
- I.パワー半導体の概要
- 求められる低炭素化社会の実現
- パワー半導体の機能
- パワー半導体の位置付け
- II.パワー半導体の業界構造
- 製造プロセスが差別化要因
- パワー半導体では日系メーカーが健闘
- 業界再編が進む
- III.パワー半導体の需要動向
- インバータの応用分野が広がる
- エアコンの省エネ化
- 加速する自動車の電動化
- IV.次世代パワー半導体市場が徐々に離陸
- ワイドバンドギャップ化による世代交代
- SiCの応用分野が徐々に広がる
- 多様化するビジネスモデル
要約と結論
- エネルギー効率の改善は、多様化する社会課題の解決策のひとつ。パワー半導体はそのキーデバイスで、有限のエネルギーを最大限活用できる循環型社会の実現や、電力エネルギーのサプライチェーンにおける効率改善に貢献する。パワー半導体は、電圧、電流、周波数等の電力変換や、入力と出力の制御をする。人間に例えると食物からエネルギーに変換し全身に供給する消化器や心臓の役割である。
- パワー半導体は他の半導体と比較して、後工程のパッケージやアプリケーションノウハウが重要である。とくにパワーディスクリート(個別半導体素子)では、日系メーカーは省エネニーズに対応してきた実績やモジュール技術があり、グローバルに見て競争力は高い。また、アナログ分野では、パワーマネジメントICの需要が拡大しており、成長分野を取り込むための業界再編が進んでいる。
- パワー半導体の中でもIGBTやパワーマネジメントIC等は成長の牽引役として期待される。モーター制御における省エネ目的ではインバータ回路のキーデバイスとして用いられる。エアコンに代表される白物家電や自動車の電動化によるインバータの普及拡大が見込まれる。また、太陽光発電等の再生可能エネルギーやデータセンターにおける無停電電源装置等の電源安定化ニーズもある。
- Si製品の物理的な限界もあり、SiCやGaN等を用いた次世代パワー半導体市場の離陸が期待される。次世代パワー半導体は高コストがボトルネックとなっていたが、高耐圧特性を強みに鉄道分野等で普及が進んでいる。今後はメガソーラーや洋上風力発電での高圧送電や、電気自動車(BEV)向け急速充電等の分野でSiCの普及が進もう。2020年代にはBEV/ハイブリッド車(HEV)用メインインバータの採用が徐々に進むと見られる。