日本企業ボトムアップ業績見通し集計(18~19年度)
-上昇するROEと伸び悩む株主還元-

論文2018年6月4日

野村證券エクイティ・リサーチ部 松浦 寿雄、藤 直也

目次

  1. I.概要と業績予想主要前提
    1. 2017年度実績の概要
    2. 2018年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2017年度実績の概要
    2. 2018年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正
    1. 2017年度実績の概要
    2. 2018年度予想の概要
  4. IV.集計表

要約と結論

  1. 17年度はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比8.2%増収、同17.5%経常増益となった。日本企業業績は、17年度後半を中心とした世界景気同時回復の恩恵を享受し、増収率は2年ぶりにプラス転換。13年度(12.5%)以来の高い増収率が実現した。
  2. 米国税制改正の影響によって税引利益は大きく押し上げられ、17年度のRussell/Nomura Large Capは前年度比32.2%税引増益となった。その影響もあり、Russell/Nomura Large CapのROEは10.3%と、直近ピークであった05年度の10.1%を上回った。17年度のROEの水準は、80年度(12.1%)以来、実に37年ぶりの高水準である。
  3. 他方、株主還元は伸び悩んでいる。 Russell/Nomura Large Capの総還元性向は15年度の50.5%から、16年度は46.6%、17年度は37.4%と2年連続で低下した。17年度の配当性向は29.0%と、2年前比で5.5%pt低下したとはいえ、30%近辺で踏みとどまっている。それに比べると、自社株買いは対税引利益で8.4%と、2年前比でほぼ半減である。
  4. 野村アナリスト予想では、18年度はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比3.0%増収、同8.7%経常増益予想である。ちなみに会社予想は同2.6%増収、同3.6%経常増益予想である。トップダウンの観点からは、ボトムアップ予想での増収率はやや慎重、マージンはやや楽観的な予想に映る。18年度上期は野村アナリスト予想が前年同期比3.6%増収、同4.3%経常増益予想、会社予想が同3.6%増収、同1.5%経常増益予想である。
  5. 18年度の為替レート前提は、円ドルが1ドル106.0円(前回前提111.0円)、円ユーロが1ユーロ131.0円(同135.0円)とした。為替レート前提を1ドル108円、1ユーロ125円として、他の条件が不変であれば、18年度の予想経常増益率は+8.9%と試算される。最近まで原油高が続いたため、企業業績への影響も聞かれることが増えたが、上記業績予想におけるWTI前提は1バレル70.0ドルである。足元の原油価格水準であれば業績予想に追加的な修正を迫るものではない。