真のキャッシュレス化政策とは
論文2018年11月27日
野村資本市場研究所 淵田 康之
目次
- I.キャッシュレス化政策の内外格差
- わが国で活発化するキャッシュレス化への動き
- 諸外国のキャッシュレス化政策との違い
- II.諸外国における決済改革
- キャッシュレス化と決済改革
- 統一的なモバイル送金サービスの導入
- 小口決済の常時即時化と中央銀行の対応
- 付加価値サービスの提供
- FinTechの活用と参加
- 競争と協調
- 新たな決済ガバナンス
- カードシステムに対する政策
- 新たな決済法制
- 改革へのイニシアティブ
- III.諸外国における現金利用抑制策
- 現金利用抑制の意義
- 高額紙幣の廃止
- 現金による高額取引の禁止
- 小額硬貨の廃止
- その他の政策
- IV.わが国の課題
- 実行すべき政策の多くが未実現
- 問われる改革の司令塔
要約と結論
- 諸外国では、決済改革と現金利用抑制策が進展する結果、キャッシュレス化が進展しつつある。わが国の場合、政府がキャッシュレス化推進を掲げているにも関わらず、決済改革は不十分であり、現金利用抑制策は議論されていない。
- 多くの国が、近年、ほぼ共通に導入している決済改革として、「統一的なモバイル送金サービスの導入」や「小口決済の常時即時化」をはじめとする、9項目を指摘できる。
- 諸外国の多くは、主として不正防止やキャッシュレス化推進の観点から、現金利用抑制策も導入している。高額紙幣の廃止、現金による高額取引の禁止、小額硬貨の廃止などの施策がある。
- わが国において、以上の施策の多くが実現していない背景の一つとして、決済関連行政が、複数の省庁によってばらばらに担われていることがあると考えられる。わが国が真にキャッシュレス化を目指すならば、省庁の枠組みを超えたイニシアティブが発揮される必要があろう。