日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(18~19年度)
-下方修正局面はまだ続く-

論文2018年12月3日

野村證券 市場戦略リサーチ部/エクイティ・リサーチ部 松浦 寿雄、藤 直也

目次

  1. I.概要と業績予想主要前提
    1. 2018年度予想の概要
    2. 2019年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2018年度予想の概要
    2. 2019年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2018年度予想の概要
    2. 2019年度予想の概要
  4. IV.集計表

要約と結論

  1. 18年度第2四半期業績は、Russell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年同期比7.4%増収、同9.8%経常増益となった。その結果、上期は前回予想(同8.1%経常増益)を上回る同14.2%経常増益に上ぶれて着地した。
  2. 会計的要因や一時的要因の影響を可能な範囲で除外した、より実体に近いベースと思われる第2四半期業績は、増収率が前年同期比4%程度、経常増益率が同6%程度であったと見ている。同じベースで見た18年度第1四半期の業績は、増収率が前年同期比5%強、経常増益率が同13%弱であったため、増収率の低下に比べて、経常増益率の低下がやや大きかった。
  3. 18年度のボトムアップ予想はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比6.7%増収予想、同8.9%経常増益予想となった。前回予想と比べると、経常増益率は2.4%ポイント下方修正された。18年度下期は前回が前年同期比6.2%増収予想と上期の7.5%増収予想から増収率が低下するのに反して14.7%経常増益と増益率が高まる予想だったが、今回は同3.3%経常増益予想まで下方修正されている。足元でドル円レートが17年度下期比円安で推移していることも考慮すると、現実的な姿に近づいたと言えよう。
  4. 今期も残り4カ月となり、「来期予想」に関心が向かう時期である。19年度のボトムアップ予想はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比3.0%増収、同9.7%経常増益予想である。一過性要因によって経常増益率が4%ポイントほど嵩上げされているほか、前回予想からの経常増益率の下方修正は0.2%ポイントと限定的で、総じて楽観的である。少なくとも「19年度上期の前年同期比0.6%経常増益予想」から受ける印象とは大きく異なる。下方修正局面はまだ続くだろう。今後のマクロ環境の変動によって左右される部分が大きいが、足元での原油市況の急落は企業業績にとって脅威である。
  5. 18年度から19年度にかけて、19業種中12業種で経常増益率の上昇が予想されているが、単に「足元業績が下ぶれただけ」という印象の業種も少なくない。18年度予想が上方修正され、19年度に向けて経常増益率の上昇を見込むサブセクターは、出版・広告、企業向けサービス、放送などである。