日本企業ボトムアップ業績見通し集計(19~20年度)
-現在が企業業績の最悪期か-

論文2019年9月4日

野村證券 市場戦略リサーチ部/エクイティ・リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.概要と業績予想主要前提
    1. 2019年度予想の概要
    2. 2020年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2019年度予想の概要
    2. 2020年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2019年度予想の概要
    2. 2020年度予想の概要
  4. IV.集計表

要約と結論

  1. 19年度第1四半期(Q1)は、Russell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年同期比1.2%増収、同5.0%経常減益となった。米中通商摩擦等に起因する外需減速などを背景に、増収率は4四半期連続で鈍化した。18年度Q4の前年同期比4.6%増収から3.4%ポイント鈍化したが、これは18年度の商社の会計基準変更の影響が大きい。商社を除けば、19年度Q1の増収率は18年度Q4比で0.3%ポイント鈍化となる。一方、経常利益は19年度Q1に計上した一過性利益による影響が強く、これを除いた経常減益率は前年同期比15.2%まで拡大する。
  2. Russell/Nomura Large Cap(除く金融)の19年度上期は前年同期比8.7%経常減益予想だが、下期には同12.0%経常増益予想と増益転換を見込む。現在は前年同期と比較した企業業績の悪化が一服する局面に入りつつあると見る。既往の増収率鈍化は外需減速がけん引したと見られる。しかし、輸出に先行する日本の経済指標は外需下げ止まりを示唆している。また、収益性悪化の背景の1つであったと見られる原材料高については、既に中間財指数の前年同月比上昇が一服している。
  3. 下期に利益回復を見込むことから、19年度はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比1.1%増収、同0.2%経常増益予想と、通年では前年度比横ばいの予想となっている。しかし、米中通商協議の帰趨が不透明であるなど、下期の利益回復が現時点の予想よりも緩やかとなる可能性もある。仮に経常減益に転じれば、2011年度以来、8期ぶりの経常減益となる。
  4. Russell/Nomura Large Cap(除く金融)の19年度予想経常利益の下方修正額は1兆7,701億円であった。経常利益ベースのリビジョンインデックスは-26.1%と、4四半期連続の下方修正優位となった。19年度の為替レート前提は、ドル円が1ドル107.72円(前回前提111.00円)、ユーロ円が1ユーロ121.62円(前回前提125.00円)で、為替前提の円高方向への変更が減額修正の一因となった。しかし、経常利益の下方修正額のうち、為替前提の変更で説明できるのは約40%程度と見られ、自動車や半導体市場の悪化、設備投資手控えなどといった世界経済悪化による影響も大きい。