5G関連日本企業の全体像
-設備系への需要拡大に加え21.3期からサービス開拓が進展へ-

論文2019年10月30日

野村證券 エクイティ・リサーチ部 増野大作、インスティネットLLC Jeffrey Kvaal、野村国際(香港) Bing Duan、
ノムラ・フィナンシャル・インベストメント(韓国) Angela Hong

目次

  1. 1.5Gの基礎技術動向
  2. 2.米国:米国ではいち早く5Gサービスが開始される
  3. 3.韓国:韓国の5G開発現状
  4. 4.日本:日本の5G時代の通信設備投資
  5. 5.中国:中国の5G開発の現状
  6. 6.5G関連日本企業

要約と結論

  1. 5G関連の日本企業を10サブセクターにおいて紹介
    本レポートでは5G(第5世代移動通信)の基礎技術や米国・韓国・日本・中国での直近の5G開発動向を紹介している。加えて日本企業が関連する10のサブセクターを取り上げ、関連企業として紹介している。
  2. 設備系では計測器、基地局、データ機器、工事、端末、素材をカバー
    ネットワーク・端末用計測器では既に世界ベースで5G向け機器の納入が進展している。また、日本での5G基地局やデータ機器は、20.3期から導入が進展する見込みである。一方、日本の素材メーカーでは5G基地局関連やMassive MIMO関連素材・光伝送部品において、世界で高いシェアを有する企業も多く、世界の設備投資動向に応じた需要増が見込めよう。次に、5G関連の通信設備工事会社では、小セル化による小型基地局工事が20.3期から拡大してこよう。5G端末では電力消費が大きく増加することが設計のボトルネックになり、スマホ設計の実務ではモジュールを使った省電力設計やメイン基板の高密度・小型化技術の導入が鍵になろう。また、5G基地局や端末の立ち上がりに応じて半導体向けテスタ需要や精密切断加工装置の需要が20.3期以降に徐々に拡大してこよう。
  3. サービス系では個人向けサービスに加えて法人市場開拓を見込む
    5G商用サービスは2019年に韓国、米国、中国で開始され、2020年春には日本での開始が見込まれる。当初の日本でのサービスは個人向けブロードバンドが中心と考えられ、様々なサービスがビデオフォーマットで提供されると期待されている。また、生中継のスポーツコンテンツは5Gに適したコンテンツと考えられる他、放送機材、動画配信サイトなども恩恵を受ける見込みである。ゲームではマルチプラットフォーム化の進展が見込める。次いでより家庭用ゲームに近いクオリティのモバイルゲームやAR(拡張現実)、位置情報を活用したゲームの立ち上がりが期待できよう。
  4. 一方、クラウドストリーミングゲームが立ち上がるのは、2020年代半ば以降となると考えられる。法人向けでは警備などのサービス提供が既に具体的に計画されている他、遠隔診療支援システムや画像診断の高度化が期待される。さらに、日本では2019年に総務省が5G向けのローカル免許を割当てる方針で、エリア限定のサービスを提供する機会も生まれる見込みである。加えて、中長期的には5G国際標準ベースのIoT(モノのインターネット)やコネクティドカーなどの市場形成が期待されよう。