日本企業ボトムアップ業績見通し集計(20~21年度)
-19年度は新型コロナで8期ぶりの経常減益-

論文2020年6月10日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.概要と業績予想主要前提
    1. 2019年度実績の概要
    2. 2020年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2019年度実績の概要
    2. 2020年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2019年度実績の概要
    2. 2020年度予想の概要
  4. IV.集計表

要約と結論

  1. 2019年度はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比2.5%減収、同22.3%経常減益で、2011年度以来、8期ぶりの経常減益となった。前回の予想(2020年3月公表、集計は2020年2月25日時点)と比べて、増収率は1.8%ポイント、経常増益率は13.6%ポイント、それぞれ下振れた。米中通商摩擦の影響で製造業を中心に苦戦が続いていたところへ、年明け後は新型コロナの影響で主要企業の業績が一段と悪化した。一部の企業による設備の稼働休止に伴う減損損失の計上や、2019年度末にかけての株価下落を受けた投資有価証券の評価損なども、利益を圧迫する要因となった。2019年度のROEは6.5%と、2018年度の10.3%から大幅に悪化した。
  2. 2020年度のボトムアップ予想は、Russell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比6.0%減収、同0.2%経常増益である。前回予想と比べると、増収率が7.1%ポイントの下方修正、経常増益率が9.6%ポイントの下方修正となった。2019年度実績が下振れたため、2020年度の予想売上高や予想経常利益水準の下方修正は、増収率や経常増益率の修正幅以上に大きくなっている。なお、新型コロナの影響を受けた厳しい事業環境下で予想経常利益がまだ2019年度と同等の水準を保っているのは、一部の企業が2019年度に計上した多額の一過性損失の反動による部分が大きい。加えて、新型コロナの影響で例年よりも2019年度決算発表の時期が遅く、また2020年度期初予想を開示しない企業が少なくないこともあって、アナリストによる業績予想の修正が完全に終わっていないことも影響している。
  3. 2019年度の業績は悪化したが、企業が配当を重視する姿勢に大きな変化はない。Russell/Nomura Large Cap(除く金融)で2019年度に前年度比で増配を実施した企業は全体の51.7%を占めた。2018年度の増配企業の比率69.3%からは低下したものの、なお過半数の企業が増配を行った。2020年度は増配を予想する企業が35.9%に低下するが、それでも減配を予想する企業の比率17.8%を上回る。