2020~22年度の経済見通し
-コロナ禍からの回復への期待と不安が混在-

論文2020年11月25日

野村證券金融経済研究所 経済調査部 美和 卓、桑原 真樹、岡崎 康平、棚橋 研悟、髙島 雄貴、新井 真、伊藤 勇輝

目次

日本経済:コロナ禍からの回復への期待と不安が混在

  1. (1)総括
  2. (2)輸出は減速局面へ
  3. (3)生産回復続くが国内外の新型コロナ感染拡大により不透明感強まる
  4. (4)設備投資の持ち直しは後ずれしよう
  5. (5)雇用・所得環境は緩慢な回復の見込み
  6. (6)個人消費の正常化への過程は緩慢
  7. (7)住宅着工は底入れ、緩やかな回復局面へ
  8. (8)次期国土強靭化計画により公共投資は増勢維持へ
  9. (9)コアCPIインフレ率は21年1-3月期に底打ち、その後は緩やかな上昇を予想
  10. (10)金融政策はコロナ対応の効果を見極める段階
  11. (11)日本経済見通し
  12. (12)世界経済見通し

米国経済:コロナ感染再拡大の中、財政支援は縮小

ユーロ圏経済:さまざまなリスクを比較考量

英国経済:下振れリスクは無視できない

中国経済:「内向き」に転じつつ「様子見姿勢」

要約と結論

  1. 11月16日公表の20年7-9月期GDP1次速報値を受け、2020~22年度の日本経済見通しを改定した。2020~22年度の実質GDP成長率は、それぞれ前年比で-5.5%、+4.2%、+2.6%と予想する。
  2. 21、22年度実質成長率が前回比下方修正となった主な要因は、米大統領選・議会選結果を踏まえた政策想定の変化と新型コロナウイルス(以下、コロナ)の内外での感染再加速の影響である。米国経済は、財政出動大型化が期待できるブルーウェーブ(大統領、議会上下院を民主党が制覇)の確度が低下したこととコロナ感染再加速を踏まえ、従来に比べて回復のスピードが緩やかになると考えられ、日本の実質輸出もその影響を受ける可能性が高い。
  3. 国内でも足元ではコロナの第三波とみられる感染再加速が生じており、20年10-12月期~21年1-3月期の実質消費については回復ペースが鈍化する可能性が高い。一方で、コロナに対するワクチンの早期開発、普及への期待も広がっている。野村では、21年後半以降、ワクチン普及に伴いコロナ禍の経済活動に対する制約は緩和に向かっていくと想定している。
  4. 現下、政府・与党は年内の追加経済対策策定、21年初の通常国会への20年度第三次補正予算提出に向けて動いている。その中には、防災、減災に向けた国土強靭化対策として公共事業の上乗せが含まれる公算が大きい。但し、建設、土木業の供給制約等を踏まえた執行可能ペースを勘案すると、上積み規模が徒に大型化する可能性は低く、野村では20年度第3次補正で2兆円程度、21年度当初予算で平年比2兆円程度の事業費追加が現実的であると想定している。
  5. コア(生鮮食品を除く総合)消費者物価上昇率は、20~22年度につきそれぞれ前年比-0.6%、+0.1%、+0.5%を予想する。足元のエネルギー価格上振れの影響に加え、コロナ禍による需要減が物価を下押す影響が想定よりやや小さめである実態を反映させたものであるが、基調として日本銀行の物価安定目標(2%)を下回る傾向は維持されると予想している。