2021年の日米株は緩和マネーと収益増で上昇傾向を続けよう

編集者の目2020年12月14日

野村證券金融経済研究所 シニア・リサーチ・フェロー 海津 政信

2021年は世界経済が新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)から回復する年になると予想される。第一の理由はワクチンの実用化である。米英医薬品大手のファイザー、アストラゼネカ、米バイオベンチャーのモデルナ等がコロナワクチンを異例のスピードで開発、実用化に成功。順次、ワクチンが世界の多くの国で承認・接種され、感染症は徐々に抑え込まれていくものと期待される。第二の理由は経済対策の効果である。米国、日本での大型財政支出増に加え、21年には欧州でもEU(欧州連合)復興基金が動き出す。加えて、緩和的な金融政策がローン金利の低下を通じ住宅、自動車の需要喚起をもたらすほか、緩和マネーを追い風とする株高が資産効果をもたらそう。野村のエコノミストチームは、世界の実質GDP成長率を21年前年比+5.6%、22年同+3.9%と予想している。コロナを早期に抑え込み経済活動を活発化させている中国と経済対策効果が大きい米国が世界経済回復をリードしよう。

企業収益はどうか。まず米国であるが、調査会社リフィニティブの12月4日集計でS&P500指数構成企業のEPS(1株当り利益)予想は21年が前年比22.4%増、22年が同16.5%増である。大統領選挙は民主党のバイデン前副大統領、上院は共和党多数の見通しとねじれ、結果として法人税の増税懸念が遠のいているのは、株式市場にプラスと言えよう。次いで日本であるが、ラッセル野村大型株(除く金融)で、21年度が前年度比42.2%経常増益予想(20年度は同18.3%減益予想)(12月1日時点)である。国内外で、コロナで停滞した経済活動が正常化するほか、新製品投入やリストラ効果など企業努力が奏功しよう。22年度も経済回復を背景に2桁増益が期待できそうだ。

21年末でも労働市場の余剰は大きく、賃金・物価環境に大きな変化は予想されない。このため、先進国中央銀行の金融緩和政策継続による緩和マネーの増加とこうした日米の企業収益の増益見通しを背景に21年も日米株は上昇傾向を続けよう。東証株価指数やS&P500株価指数は5-10%の上昇を期待しうるだろう。

それでは、日本株についてどういった投資アイディアが有効か、考えてみよう。
まず第1に注目したいのは日本流プラットフォーマーである。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のような巨大プラットフォーマーは人口規模等からみて日本では難しいが、セグメントされた分野では日本流プラットフォーマーの活躍余地は大きい。たとえば、ゲームではソニーのプレイステーション、任天堂のニンテンドースイッチなどが世界に誇りうる。また、FA(工場自動化)ではNC装置が日本の工作機械を世界に冠たる存在に押し上げ、センサー等でも存在感を見せている。さらに医療・ヘルスケアでは、インターネットを利用した医療関連サービスが高成長を遂げている。

第2は半導体関連株であろう。テレワーク、オンライン教育の普及、5G(第5世代移動通信)の基地局・同スマートフォン、データセンターの成長等から半導体サイクルは22年ぐらいまで上昇局面を辿るとみられる。これにつれ、NANDフラッシュ、イメージセンサー、積層コンデンサー等の電子部品、半導体製造装置、半導体シリコンなど半導体関連の好業績が期待される。

第3はEV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)などの環境車関連株であろう。地球温暖化問題の解決に向け、欧州に次いで、日本、米国も温室効果ガス削減を目指し、自動車の環境規制を強化していこう。特にバイデン米政権は環境重視を政権公約にEVに力を入れるものの、バッテリーの寿命、コスト等課題も多く、HVに対する需要は強く、30年代に向けガソリン、ディーゼル車のシェアを奪い、HVも高成長を続けることが期待される。

第4はワクチンの効能と普及ペースによるが、コロナによりダメージを受けたレジャー、不動産、鉄道、空運等の業種の見直しであろう。もちろん人々の行動変容、ニューノーマルを考えるとコロナ前の需要水準に戻ることはかなり難しく、ダウンサイズ化や収益源の多様化等の経営努力が前提になるが、出遅れ修正の可能性はあろう。

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