日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(21~22年度)
-21年度は幅広い業種で増益予想-

論文2021年6月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
    1. 2020年度実績の概要
    2. 2021年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2020年度実績の概要
    2. 2021年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2020年度実績の概要
    2. 2021年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

    【2020年度実績の概要】

  1. 20年度はRussell/Nomura Large Capで、売上高が前年度比-7.5%、営業利益が同-18.9%、経常利益が同+4.5%、税引利益が同+16.3%であった(売上高と営業利益は金融業種除く、以下同じ)。ソフトバンクグループを除くベースでは、経常利益が同-10.1%、税引利益が同-9.4%であった。新型コロナ禍では運輸などの非製造業を中心に厳しい決算となったが、IT関連や巣ごもり消費が活況となったことや、年度後半から財需要が回復したことで、四半期ベースでは第3四半期から増益に転換した。
  2. Russell/Nomura Large Cap構成銘柄を対象に、各社が開示している20年度のコスト削減などの収益性改善効果を集計すると、20年度の経常利益を約11%、ROEを約0.6%ポイントそれぞれ押し上げた計算になる(いずれもソフトバンクグループを除くベース)。特に、鉄鋼・非鉄、運輸などで利益改善への寄与が大きかった。新型コロナ禍での需要減に苦しんだ業種ほど、収益性改善努力を徹底した形である。
  3. 収益性改善効果や需要回復などを含め、企業業績はアナリスト予想を上回るモメンタムで改善している。20年度経常利益は、通信、自動車、金融、電機・精密など19業種中15業種が野村事前予想を上回った。下回った業種でも一過性要因が多く、必ずしも事業環境が悪化し続けているわけではない。なお、21年6月1日時点のリビジョンインデックスは+16.2%と3月1日時点の+29.3%から低下した。しかし年度初であることから例年6月は同指標が低下しやすい。業績予想の上方修正優位は続くと見ている。
  4. 【2021年度予想の概要】

  5. 21年度はRussell/Nomura Large Capで売上高が前年度比+9.9%、営業利益が同+43.7%、経常利益が同+19.3%、税引利益が同+20.0%予想である。ソフトバンクグループを除くベースでは経常利益が同+35.1%、税引利益が同+44.3%である。新型コロナ禍からの経済活動平常化で、幅広い業種で増益を予想する。増益寄与が大きいと予想される業種は、製造業では自動車、化学、鉄鋼・非鉄、電機・精密、機械など、非製造業では運輸、商社、小売りなどである。
  6. 業績見通しのリスクとしては、第一に過度な原材料高が挙げられる。自動車の一部では、原材料高を理由とした業績予想の下方修正が見られた。一方、足元では原材料価格上昇が一服していることや、原材料高の背景は好調な財需要であることを踏まえると、企業業績全体への影響は現時点では軽微と見る。第二に、新型コロナ感染拡大が挙げられる。しかし、国内でもワクチン確保の目途が立っていることから、リスクは低下していると見られる。