日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(21~22年度)
-22年度にかけて高い増益率を見込む-

論文2021年9月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

    【2021年度予想の概要】

  1. Russell/Nomura Large Capの21年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+11.8%/+52.6%/+28.3%/+31.1%である(売上高と営業利益については金融を除くベース、以下同じ)。20年度はソフトバンクグループの投資事業利益が大きかったことから、21年度の経常利益及び税引利益の増益率はその分押し下げられている。同社を除くベースでは、経常利益/税引利益の予想はそれぞれ+45.6%/+57.8%となる。
  2. Russell/Nomura Large Cap(除く金融)について18年度の売上高の水準を100とすると、21年度の売上高は100.9となり、新型コロナ前の水準を回復する予想である。一方、同じく18年度を100とした21年度の経常利益水準は106.5と、回復率がさらに高い予想になっている。新型コロナ禍での各社の費用削減努力が奏功した点や、財需要が強い一方で供給が制約されていることなどによる収益性の改善が背景にある。21年度の売上高経常利益率は8.9%と、18年度比0.9%ポイント高い水準を予想している。
  3. 【2022年度予想の概要】

  4. 22年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+3.3%/+11.8%/+10.9%/+11.2%である。新型コロナ前の5年間(13~18年度)の経常利益の成長率は年率4.7%であった。21年度に新型コロナ前の経常利益水準を上回る見通しであるが、22年度も過去平均を上回る高い成長率を見込んでいる。新型コロナ禍からの経済正常化が続くと見ているほか、例えば自動車セクターで22年秋まで在庫が通常を大幅に下回り値引きが抑制されるとみているなど、収益性の高さも維持される予想である。
  5. 21年度と22年度の経常利益水準は、前回集計時点(6月1日時点)からそれぞれ7.5%、3.6%上方修正された。上方修正の金額が大きかったのは商社、自動車、運輸、電機・精密などであった。原材料高や半導体不足といったサプライチェーン上のひっ迫は、売上機会の逸失という企業業績のリスク要因である。しかし、資源価格の上昇が関連セクターの見通しを改善させたり、需給ひっ迫が価格交渉力の上昇により収益性の改善につながったりするなど、むしろ企業業績見通しを改善させている。
  6. ただ、サプライチェーン上の懸念点は引き続き企業業績見通しのリスク要因である。原材料高による利益率ひっ迫は第2四半期以降に本格化するとみられる。また、新型コロナ変異株の感染拡大は経済正常化を鈍化させるだけでなく、業種によっては工場稼働率の低下などサプライチェーン問題にもつながっている。