日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(21~22年度)
-21、22年度と連続増益を見込む-

論文2021年12月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

    【2021年度予想の概要】

  1. Russell/Nomura Large Capの21年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+12.3%/+56.4%/+32.3%/+34.0%である(売上高と営業利益については金融を除くベース、以下同じ)。20年度はソフトバンクグループの投資事業利益が大きかったため、同社を除くベースを計算すると、21年度の経常利益/税引利益の予想はそれぞれ+49.2%/+60.5%となる。
  2. 【2022年度予想の概要】

  3. 22年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+5.1%/+13.3%/+10.3%/+10.9%である。新型コロナ前の5年間(13~18年度)の経常利益の成長率は年率4.7%であった。21年度、22年度はそれを上回る利益成長率を見込んでいる。同構成銘柄のうち直近10年間の経常利益が比較可能な銘柄を対象に集計すると、21年度と22年度は最高益(18年度)をそれぞれ11.9%、23.7%上回るという非常に高い利益水準となる見通しだ。
  4. コロナ禍からの業績回復の過程では半導体不足、原材料高といったサプライチェーンひっ迫に加えて、中国の景気ピークアウト懸念が浮上した。自動車セクターでは減産の影響で21年度の経常利益を下方修正、鉄鋼・非鉄セクターでは原材料高と鋼材価格下落を織り込み22年度の経常利益を下方修正した。
  5. 一方で、供給制約は収益性の改善に結びついている面もある。自動車セクターでは、供給不足により値引きが抑制される状況となっていることから、22年度の経常利益を上方修正した。化学セクターでは米国におけるハリケーンや中国での電力規制による生産抑制が塩ビの収益性向上に寄与している。為替前提を円安方向に修正したこともあり、トータルで見れば企業業績見通しは上方修正となった。21年度と22年度の経常利益水準は9月1日集計時点からそれぞれ3.2%、2.7%上方修正された。
  6. ただし、9月1日集計時点では6月1日集計時点からそれぞれ7.5%、3.6%上昇修正されていたのに比べ、上方修正モメンタムは鈍化した。既に高い経常利益水準が予想されている面もあるが、業績見通しの上方修正の出尽くしが見え始めている可能性に注意したい。今後の業績上積み余地を評価する上では、(1)サプライチェーン動向、(2)中国をはじめとした外需の再加速、(3)新たな変異種の感染状況と国内外への影響、(4)収益性改善などの各社の取り組み、などが注目点となろう。