日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(21~22年度)
-21、22年度共に見通しを上方修正-

論文2022年3月8日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2021年度予想の概要
    2. 2022年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

    【2021年度予想の概要】

  1. Russell/Nomura Large Capの21年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+13.5%/+58.0%/+36.0%/+39.8%である(売上高と営業利益については金融を除くベース、以下同じ)。20年度はソフトバンクグループの投資事業利益が大きかったため、同社を除くベースを計算すると、21年度の経常利益/税引利益の予想はそれぞれ+53.7%/+67.5%となる。
  2. 【2022年度予想の概要】

  3. 22年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+6.6%/+15.0%/+10.9%/+10.5%である。新型コロナ前の5年間(13~18年度)の経常利益の成長率は年率4.7%であった。21年度、22年度はそれを上回る利益成長率を見込んでいる。Russell/Nomura Large Cap構成銘柄のうち直近10年間の経常利益が比較可能な銘柄を対象に集計すると、21年度と22年度は最高益(18年度)をそれぞれ14.7%、28.1%上回るという非常に高い利益水準となる見通しだ。
  4. 21年度第3四半期は前年同期比11.2%増収であった。営業レバレッジがあることから、営業増益率は増収率よりも高くなる。13~20年度の相関関係に基づくと、同11.2%増収では営業増益率は同30%と試算される。一方、実績の営業増益率は同22.1%と試算値を下回った。原材料価格の上昇が営業利益を下押ししたと見られる。例えば、日系完成車7社の決算では、原材料高が4,191億円の減益要因となり、営業利益率を2.5%ポイント押し下げた。
  5. 経常利益予想を下方修正した業種の中で、食品や家庭用品などで原材料高への言及が見られた。22年1月の企業物価指数が前年同月比8.6%上昇した一方、消費者物価指数総合の上昇率は同+0.5%に留まった。対消費者ビジネスは価格転嫁が相対的に進んでおらず、原材料高の影響が特に厳しくなっていると見られる。一方、資源価格上昇の恩恵を受ける商社や高止まりするコンテナ運賃が追い風になる運輸など、世界的な需要超過がプラス作用する業種では上方修正額が大きかった。
  6. Russell/Nomura Large Cap全体では21年度と22年度の経常利益水準は21年12月1日集計時点からそれぞれ2.8%、3.9%上方修正された。ただし、引き続き原材料高の影響には注意が必要である。製品の販売とその製造に用いた原材料の調達タイミングには時差があるため、原材料価格の変動が企業業績に影響を及ぼすまでに1~2四半期程度かかる。こうした時差を踏まえると、原材料高の影響は21年度第4四半期業績により大きくなることが考えられる。