日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(22~23年度)
-22年度は実質6.9%経常増益予想-

論文2022年6月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
    1. 2021年度実績の概要
    2. 2022年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2021年度実績の概要
    2. 2022年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2021年度実績の概要
    2. 2022年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

    【2021年度実績の概要】

  1. 21年度のRussell/Nomura Large Cap(以下、RNL)の企業業績(前年度比)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ+14.1%/+58.3%/+34.1%/+38.9%であった。20年度にはソフトバンクグループ(9984)の投資事業利益が、21年度には同損失がそれぞれ大きく計上された。同社を除くベースでは21年度の経常利益/税引利益がそれぞれ+58.7%/+78.4%であった。22年度予想(前年度比)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ+10.3%/+12.3%/+11.1%/+9.7%である。ソフトバンクグループを除くと、経常利益/税引利益がそれぞれ+6.9%/+3.1%である。22年度も新型コロナ前の5年間経常利益の平均成長率(13年度を起点に18年度まで、年率4.7%)をやや上回る予想だ。
  2. 【2022年度予想の概要】

  3. 22年度の予想経常利益総額は3月2日集計時点から1.4%下方修正と、同年度の予想値を集計して以来初めての下方修正となった。特に自動車セクターの下方修正金額が大きい。トヨタ自動車(7203)が原材料高に対してサプライヤーの負担も受け入れるという異例の対応を行ったことなど、個社要因が強かったともいえる。ただ、業績予想修正動向を社数ベースで集計したリビジョンインデックスは、今回の集計で-8.7%と20年9月以来のマイナス(下方修正優位)に転じた。
  4. 業績見通しの上方修正は一巡したものの、予想する利益水準は高い。RNL構成銘柄のうち直近10年間(12~21年度)の経常利益が比較可能な銘柄を対象に集計すると、21年度は過去最高益(18年度)を15.7%上回り、22年度は28.6%上回ると予想している。こうした利益水準の高まりの背景には収益性の改善がある。RNL(除く金融)の売上高経常利益率はこれまで17年度の8.3%が最高水準であった。21年度の同利益率は9.0%と17年度を上回り、22年度には9.4%とさらに上昇する予想である。(1)コロナ禍の需要減の中で各社が費用削減努力を進めたこと、(2)サプライチェーンのひっ迫が企業の価格交渉力向上をもたらし、かえって収益性改善に繋がったこと、などが要因として挙げられる。