日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(22~23年度)
-円安効果に助けられる構図が続く-

論文2022年12月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2022年度予想の概要
    2. 2023年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2022年度予想の概要
    2. 2023年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

  1. Russell/Nomura Large Capの予想経常利益(前期比ベース)は、22年度/23年度がそれぞれ+9.6%/+6.2%との集計結果となった。一過性損益の影響が大きいソフトバンクグループ(9984)を除くベースでは、それぞれ+7.0%/+5.8%となった。このうち、22年度の経常増益は円安による効果が大きい。今回のアナリスト予想が準拠する為替前提は22年度:1ドル137.04円であり、21年度比で24.7円の円安ドル高である。野村アナリストが試算する為替感応度(1円/ドル変動に伴う利益への影響)を基に集計すると、ソフトバンクグループを除く22年度経常利益の予想増益率を8.8%ポイント押し上げる計算である。この為替影響を差し引いた「実力ベース」の22年度の経常利益は前期比-1.8%となる。
  2. 予想経常利益(ソフトバンクグループを除く)は前回集計時点(9月1日)と比較して22年度が0.1%、23年度が0.9%のそれぞれ下方修正となった。業績予想の修正においても為替の影響が大きい。今回、ドル円前提を22年度:137.04円(前回比+7.11円)、23年度:140.00円(前回比+10.00円)と円安方向に修正した。上述した為替感応度で円安による上方修正効果を試算すると、22年度が2.4%、23年度が3.1%となる。言い換えれば、円安以外の影響がそれぞれ2.5%、4.0%の下方修正要因となったと言える。
  3. 各社の業績予想の下方修正要因を確認すると、景気減速や原材料高、半導体不足などが挙げられる。特に23年度予想においては景気減速に言及した下方修正が22年度よりも多い。実際、23年度の業績予想の修正動向を業種別にみると、電機・精密、機械、鉄鋼・非鉄といった代表的な景気敏感業種で下方修正額が大きくなっている。
  4. 22年度の予想経常増益率は円安により押し上げられている面が大きく、また為替前提変更に伴う円安メリットの反映を除けば、22、23年度共に予想経常利益は下方修正されている。円安効果を除いた実力値に近い日本企業の業績見通しは厳しくなっている。こうした構図は前回のボトムアップ業績集計と同じである。
  5. 足元では円安ドル高の進行が一服し、直近時点のスポットレートは予想前提と概ね同じ水準にある。今後の業績予想の修正において円安効果が見込みにくくなっている。業績予想の下方修正が顕在化するリスクが高まっていると考える。