日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(23~24年度)
-23年度以降も緩やかな増益が続く見通し-

論文2023年6月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2022年度実績の概要
    2. 2023~24年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2022年度実績の概要
    2. 2023年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

  1. Russell/Nomura Large Cap指数の構成企業を対象に、22年度決算と23~24年度業績予想を集計した。全業種(除く金融)ベースで22年度実績は、前年度比で17.2%増収、同6.9%営業増益、同7.7%経常増益であった。前年度比で円安が進んだことや、値上げの実施などにより、売上高は2桁の伸びを記録した。しかし、原材料価格上昇の影響や一過性損失の計上などにより、営業利益、経常利益ともに増益率は10%未満と、増収率を大幅に下回った。なお、前回の集計(23年3月1日時点)と比較して、増収率は0.5%ポイントの上方修正、営業増益率は0.4%ポイントの上方修正、経常増益率は0.5%ポイントの下方修正で、いずれも大きな変動ではなかった。
  2. 23年度予想は全業種(除く金融)ベースで、前年度比0.3%増収、同11.1%営業増益、同4.2%経常増益である。前回の集計(23年3月1日時点)からは、増収率は0.5%ポイント上方修正、営業増益率は0.3%ポイントの上方修正、経常増益率は0.1%ポイントの下方修正となった。
  3. 今回、新たに24年度予想の集計を行った。全業種(除く金融)ベースで、前年度比2.5%増収、同9.1%営業増益、同8.4%経常増益である。欧米の景気が回復に向かい、製造業を中心に幅広い業種がその恩恵を享受すると見られ、23年度に続いて堅調な増益基調が続くと予想する。
  4. 上方修正企業と下方修正企業の比率の差を示すRussell/Nomura Large Cap(除く金融)のリビジョン・インデックス(RI)は、2023年6月(対象年度は23年度予想、対象期間は23年3月2日から6月1日)で-1.1%で、アナリストによる上方修正社数と下方修正社数とが拮抗した。業種別では素材産業の下方修正が目立つ一方で、半導体不足が解消に向かい、生産が回復する見通しの自動車が含まれる加工産業では上方修正が多い。
  5. 22年度の総還元額は約21.8兆円となり、初めて20兆円を上回った。また、総還元性向は54.9%と前年比で7.3%ポイント上昇した。総還元性向が上昇した背景として、(1)還元の原資となる利益の伸長、(2)22年度期中において自社の株価が割安と判断する企業が多かったこと、(3)1月30日に東証が中長期的な企業価値向上に向けた取組の動機付けについて公表したこと、などが挙げられる。