後悔しないアクティブ・ファンドの選び方

経済金融コラム2025年6月20日

野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社 ファンド分析部長、ファンド・リサーチ・ヘッド 今村 信博

近年、インデックス・ファンドへの関心が高まる一方で、アクティブ・ファンドの存在感は依然として大きい。個人投資家がアクティブ・ファンドを選ぶ際、その選択次第で投資成果に大きな差が生じることも多い。そこで、ファンド評価に20年以上関わってきた経験をもとに、「後悔しないためのアクティブ・ファンドの選び方」を解説する。

投資信託は大きくインデックス・ファンドとアクティブ・ファンドに分かれる。インデックス・ファンドは代表的な指数に連動することを目指し、指数採用銘柄を構成比に沿って保有し、低コストで指数に準じたリターンを追求する。一方、アクティブ・ファンドは指数を上回るリターンを目標とし、指数外の銘柄も含めて独自に銘柄を選別する。運用哲学やリサーチ力がパフォーマンスに直結し、コストも高めである。商品性が異なるため、単純な優劣比較には意味がない。

国内に約5,000本ある公募投資信託のうち、アクティブ・ファンドは約83%を占めている(注1)。アクティブ・ファンドの魅力は投資対象の幅広さにあり、特定地域、業種、テーマ、小型株やハイイールド債など、インデックス・ファンドでは対応が難しいニッチ市場に投資できる点が投資家の選択肢を広げる。また、運用者が厳選した企業に投資することで、単なる金銭的リターンにとどまらず企業成長を支援する社会的な意義も享受できる。

ここで、アクティブ・ファンドのパフォーマンスを見てみよう。日本株アクティブ・ファンドはインデックス・ファンドに対して過去25年で平均リターンが年率0.43%上回り、勝率は約71%に達する(注2)。グローバル株でも類似の傾向がみられる。一方、米国株市場は情報が迅速かつ正確に株価に反映される高い市場効率性を持ち、マグニフィセント・セブンと呼ばれる巨大IT企業群が指数上位を占め、そのパフォーマンスを牽引している。結果としてアクティブ・ファンドはリスク管理の観点からこれら銘柄を十分に保有できず、インデックス・ファンドに比べ不利になる場合が多い。このため、米国株市場はアクティブ運用にとって厳しい環境とされるが、厳しい中でもインデックスを上回るファンドは存在し、運用力の見極めが重要な課題である。

アクティブ・ファンドのパフォーマンスは運用者の力量で大きく差が出る。過去10年間の日本株アクティブ・ファンドでは、最高で+284%、最低で-25%と300%以上の差が生じた例もある(注3)。では、過去の好成績だけを頼りに選べばよいのだろうか。実際の検証では、2020年12月までの3年間と2023年12月までの3年間に分けてパフォーマンス順位の変動を分析したところ、前半で上位だったファンドが後半に順位を大幅に落とすケースや、逆に前半で下位だったファンドが後半に順位を上げるケースも多かった(注4)。つまり、過去の成績は将来を保証しておらず、市場環境変化や運用方針、運用者交代などで運用状況は変わるため、過去実績だけで将来を予測するのは難しい。

ファンドの評価方法には大きく分けて「定量評価」と「定性評価」がある。定量評価は過去の運用成績など数字を基にした評価であるのに対し、定性評価は運用体制や運用哲学、情報開示など数値に表れない要素を総合的に分析して、将来の運用成果を見極める評価手法である。野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング(NFRC)では、過去の実績だけで将来の成果を判断することは限界があると考え、将来のファンドのパフォーマンスへの期待度を測る目的で定性評価を重視している。

NFRCの定性評価は(1)情報収集、(2)調査・分析、(3)現地訪問や運用者へのインタビュー、(4)評価レーティングの4段階で行われる。運用成績だけでなく、運用体制の強固さや投資哲学のぶれのなさ、投資戦略の差別性や一貫性、情報開示の透明性などを評価し、中長期で安心して任せられるかを見極める。ファンドは「生もの」であり、運用者交代や方針変更で品質が変動するため、選定後も継続的にモニタリングし最新状況を把握することが重要だ。

個人投資家にとって、アクティブ・ファンドを選択する際に特に注目すべきは以下の5点である。まず投資哲学・運用方針である。運用者の考え方に共感でき、納得感があることが重要である。次に運用実績であり、運用者がこれまでどのような運用を行い、結果を残してきたかを理解するのに役立つ。3つ目はコスト水準で、信託報酬や購入手数料の合理性と、それに見合う成果を期待できるかの判断が肝要である。4つ目はポートフォリオの中身であり、保有銘柄が運用方針に合致し、納得感があることを見極める。最後に資産規模の適正さで、急激な縮小や過大な膨張は運用方針の変更リスクを伴うため、規模の動向を注視すべきである。

後悔しないファンド選びを実現するためには、今回挙げた5つのポイントをしっかり押さえることが重要だ。また、市場環境や運用状況は常に変化するため、多角的な情報収集と継続的なモニタリングが欠かせない。必要に応じて信頼できる専門家の意見や評価を上手に活用し、自身に合ったファンドを見極めることが望ましい。これらの取り組みが、長期的な資産形成の成功につながると考えている。

  • (注1):ファンド数は、野村総合研究所Fundmarkの国内籍公募投信のデータから上場投信や公社債投信、マネープール、ブル/ベア、限定追加型などを除いてNFRCが集計(2025年3月末時点)。
  • (注2):1999年4月から2024年3月までの25年間、60ヵ月移動平均リターンの年率化したデータを使用。日本株のアクティブ・ファンドは野村総合研究所Fundmarkの国内株式/一般/フリー(通貨選択型の外貨コース等を除く)、インデックス・ファンドは国内株式/インデックス/TOPIXに分類されるファンドを対象としている。リターンは全て基準価額(信託報酬等のコスト控除後)で計算。
  • (注3):2014年1月から2023年12月までの10年間のデータを使用。野村総合研究所Fundmarkで国内株式/一般/フリーに分類された全投資信託(通貨選択型の外貨コース等を除く)の税引き前分配金再投資後リターンを使用。アクティブ・ファンドおよびインデックス・ファンド平均は単純平均。
  • (注4):野村総合研究所Fundmarkで国内株式/一般/フリーに分類(通貨選択型の外貨コース等を除く) され、過去6年間の運用実績を有するファンドが対象。

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