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女子ゴルフ プロゴルファーが試合に出るための関門「QT」
プロテストに合格しただけではトーナメントには出られない

新たなヒロインが続々と誕生する女子プロゴルフツアー。彼女たちは倍率約30倍のプロテストを突破してきていますが、これだけではトーナメントに出ることはできません。晴れ舞台への出場権を得るためには、もうひとつの関門をクリアする必要があります。

翌シーズンの出場資格を争うQT

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストに合格した選手は、トーナメントへの出場権を得るため毎年11~12月に行われるクォリファイングトーナメント(QT=予選会)に挑みます。QTは「ファーストステージ」と「ファイナルステージ」の2段階。ファイナルステージには、レギュラーツアーでシード権(ポイントランキング50位以内)を獲得できなかった選手も出場し、4日間72ホールで争われます。
なおQTでは全ての選手に順位を付ける必要があるため、「〇位タイ」はありません。トータルスコアで並ぶと「第4ラウンドのスコア」のいい選手が上位に、それも同じ場合は「第3ラウンド」、「第2ラウンド」、「第1ラウンド」とさかのぼっていきます。

そもそもトーナメントの出場順位とは

トーナメントの出場枠は概ね108人。この枠はまずシード選手に与えられ、次にマンデーと呼ばれる予選を勝ち抜いた選手、有力アマチュア選手、海外からの招待選手などの「主催者推薦」(最大18人)で埋まっていきます。
残った40枠前後がQTの上位選手から順に与えられていきます。40位以内であれば出場はまず大丈夫、50位になるとシード選手の欠場数次第、60位以下になると厳しい…。QTでいかに成績を残せるかで、翌年の出場試合数が大きく変わるため、全ラウンドを通して1打も無駄にできないのです。

QT上位以外は、下部ツアーから這い上がることをめざす

レギュラーツアーに出ることができない多くの選手は2部に相当する「ステップ・アップ・ツアー」に出場することになります。同ツアーの年間賞金ランク2位以内に入ると翌シーズンの第1回リランキング(後述)までの出場資格が約束され、3~10位の選手と各トーナメントの優勝者はその年のQTでファーストステージが免除されます。ステップ・アップ・ツアーで活躍するほどレギュラーツアーへの出場権が近くなるのです。
なお、昨年のQTでは310人の選手にランキングが付きました。ステップ・アップ・ツアーへの出場権もQTランキング上位者から優先的に与えられていきます。

上位になっても安心できない「リランキング制度」

かつてQTランキングは、翌シーズン全期間に渡って有効でした。しかしこのシステムだと、QTランキングの低い選手がトーナメントで好成績を収めても、その後の出場権利を必ずしも得られないというケースが多々ありました。そこで、勢いのある選手が機会を得られるよう現在はシーズン中に2回、6月と9月に、その時点までに稼いだポイントに応じて順位を入れ替える「リランキング制度」が導入されています。

リランキング制度の恩恵を受けた稲見萌寧、岩井姉妹

この制度の恩恵を受けた代表例が、2019年の稲見萌寧です。2018年のQTではファイナルに進出できずランキングは103位。通常レギュラーツアーには出られない順位ですが、「主催者推薦」で出場したシーズン前半でトップ10に3回入り、第1回のリランキングで14位に浮上しました。以降の出場資格を得ると、7月に初優勝。翌2020~21年シーズン(コロナの影響により統合)は9勝を挙げて年間女王となり、2021年の東京2020大会では銀メダル獲得と、一気に頂点へ駆け上がっていきました。
岩井明愛、千怜姉妹もまた、2021年のQTでは70位と90位でしたが、「主催者推薦」で出場した翌シーズン前半にポイントを積み上げるとリランキングで30位と33位に浮上。以降の出場資格を獲得し、今シーズンは姉妹揃って年間女王争いに絡むまでに成長しました。

QTは、一般ギャラリーだけでなく関係者も観戦できないのはプロテストと同様。違うのは、高校3年生から受験可能なプロテストは若い選手が多いのに対し、QTは通算何勝も挙げている大物選手がシードを失って出場しているケースも珍しくないということ。1打の違いで出場可能試合数が大きく変わることもあれば、下位に沈んだベテランに事実上の引退を決意させることもあり、ピリピリした雰囲気はプロテスト以上。そのため多くの選手が「2度と行きたくない」と口を揃える過酷な4日間です。

文:森伊知郎

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