2024年3月1日
日本では女子ツアーが「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」（2月29日～3月3日）で始まりました。夏にパリ2024オリンピック競技大会（パリ2024大会）を控えた今シーズンは例年とは様相が異なることも予想されます。
女子ツアーは11月一杯までほぼ毎週、トータル37大会が行われます。春先から調子を上げるとシーズン後半に息切れしてしまうため、最初は「様子見」といった感じの選手が多い一方で、限られた試合数しか出られない選手はエンジン全開。このため、シーズン序盤は初優勝者が誕生する傾向にあります。それが今年は一変するかもしれません。理由は8月7日～10日にゴルフ競技が開催されるパリ2024大会。晴れの舞台に出ることができるのは「オリンピック・ゴルフ・ランキング（OGR）」の各国上位2人（15位以内の場合は最大4人）までです。最新のOGRでは、畑岡奈紗が16位で古江彩佳が17位。米ツアーを主戦場にする2人を追うのは23位相当で2年連続年間女王の山下美夢有。さらに笹生優花、岩井明愛、櫻井心那が後に続きます。OGRは世界ランキングを基に算出されますが、稼げるポイントには日米で概ね倍の差があります。つまり日本ツアーを主戦場にしてポイントを稼ぐためには、それこそ「勝ちまくる」ぐらいの勢いが必要ということ。6月24日付けのOGRで出場選手が決まります。
国内のメジャー初戦は5月2日～5日の「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」。都心からのアクセスもいい茨城ゴルフ倶楽部（GC）で開催されます。東西36ホールある茨城GCの東コースではこれまでに4回開催されていますが、そのうち3大会の優勝者が海外メジャーの優勝経験者（チョン・インジ、レキシー・トンプソン、渋野日向子）でもあります。実力者ばかりが勝つ理由は、2013年の男子ツアー「日本オープンゴルフ選手権」開催に合わせて改修されたコースにあります。多くのコースではティーイングエリアからフェアウェーに向かって少し打ち下ろしていく地形なのに対し、このコースはほぼフラットなのできっちりと飛距離を出すことが必要です。ラフも長く設定されているほか、グリーンは傾斜がきつく、勝つためにはティーショットからパットまで全てにおいて精度の高いプレーを続けることが求められます。
海外メジャーで特に注目するのは「AIG女子オープン（全英女子オープン）」（8月22日～25日）。今年の会場はゴルフ誕生の地として知られる「セントアンドリュース・オールドコース」で、2007、2013年に続く3回目の開催となります。例年だと、日本ツアーでの6月中～下旬までのポイントランキング上位者は出場資格を得ることができるので、パリ2024大会とともにセントアンドリュースを目指し目の色を変えてくる選手もいるはずです。渋野日向子が2019年の「ワールドレディスサロンパスカップ」で初優勝を遂げると、その後「AIG女子オープン」も制覇し、一躍スーパースターとなりました。これに続くシンデレラストーリーは生まれるのでしょうか。
6～8月にかけては海外メジャー4大会のほかパリ2024大会があるため、必然的にランキング上位選手が国内不在となるケースが増えます。そうなるとQTランク下位で通常だと出場資格（順位）が回って来ない選手に機会が巡ってきます。少ないチャンスをモノにし新たなスターが誕生するかに注目です。
9月に入ると国内メジャー大会が続きます。「ソニー日本女子プロゴルフ選手権大会」（9月5日～8日）は沖縄本島北部のかねひで喜瀬カントリークラブが舞台。海に近いこのコースは風を制することができるかが勝負のポイントとなりそう。「日本女子オープンゴルフ選手権」（9月26日～29日）は茨城県の大利根カントリークラブで開催。高低差が3メートルしかないフラットなコースが特徴で、この場所で行われた過去2回の大会では樋口久子さん、宮里美香という二人の実力者が優勝しています。
シーズン終盤の10月31日～11月3日に開催される「TOTOジャパンクラシック」は日本で唯一開催される米女子ツアーの試合です。優勝すると翌季米ツアーへの出場資格を得ることができ、2023年に勝利した稲見が2007年の上田桃子に次いで今季この権利を行使しています。海外志向が強い選手にとっては、"地の利"も活かせる最短ルートとあって、特別な思いで臨む選手がいるはずです。
文：森伊知郎
