SDGs債市場の拡大に向けて~ポストコロナとSDGs新時代~

SDGs債市場の拡大に向けて
~ポストコロナとSDGs新時代~

気候変動や社会課題への対応など、SDGs(持続可能な開発目標)の達成につながる事業への資金調達に使われるSDGs債。その市場は年々拡大を続けています。
SDGs債の特徴やポストコロナにおける今後の展望など、日本のSDGs債市場の裾野をさらに広げるために、2020年7月30日、野村グループはSDGsセミナーをオンラインで開催しました。

環境問題への対策の一つとしてのグリーンボンドや社会課題への対応を目的としたソーシャルボンド、両方の特性を有するサステナビリティボンド等の総称

プログラム

特別講演 『コロナの先の世界におけるSDGs「行動の10年」』

蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授

講演 『コロナ禍とSDGs債市場の拡大』

江夏 あかね

株式会社野村資本市場研究所

野村サステナビリティ研究センター長

パネルディスカッション『SDGs債に対する取り組みとポストコロナへの期待』

特別講演 『コロナの先の世界におけるSDGs「行動の10年」』

蟹江 憲史 氏
慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科 教授

コロナ禍でストップしてしまった持続可能な社会への動きを再び取り戻すために

現在世界が直面するコロナ禍やその先の社会については見通せないことが数多くあります。しかし、そのような状況でも、SDGsが今後さらに重要になることは間違いないと考えています。コロナ禍は、今まで先送りしてきた社会の課題を改めてはっきりとさせ、私たちが「持続不可能」な社会にいることに気づくきっかけになったと思います。

SDGsの最新動向については、大きく4つの動きがあげられます。まず1つ目は、SDGsを普及させていくという期間を経て、いよいよ「行動の10年」を迎えたということ。また、2つ目として、進捗の評価が一大テーマになることがあげられます。3つ目はSDGsのローカル化です。日本国内でも、サステナブルな取り組みをしている企業に地域の金融機関が投融資していくという「地方創生SDGs金融フレームワーク」が始まっています。そして4つ目として、企業による活動の本格化があります。

SDGsは、2030年における「世界のカタチ」ともいえます。企業が活動を本格化していくためには、その2030年に向けてあるべき姿を描き、経営計画などに落とし込んでいくことが重要になります。SDGsに関連するリスクへの対応も欠かせません。さらに、近年サステナブル投資が急増し、コロナ禍においてもその傾向が変わらないように、企業の資金調達においてもSDGsは非常に重要です。SDGsに取り組む企業と、ESGに関心を抱く投資家を結びつけることは、コロナ禍によってストップしてしまった持続可能な社会への動きを再び取り戻す大きな力になると思っています。

SDGsでは、17の目標のもと169のターゲットを掲げています。しかし、その目標にたどり着く方法については述べていません。つまり、ルールはなく、自主的に取り組んでいく活動がSDGsなのです。それだけに企業にとっては差がつきやすい。これからの時代、その差をつける側に立つことが大切なのです。

講演 『コロナ禍とSDGs債市場の拡大』

江夏 あかね
野村資本市場研究所
野村サステナビリティ研究センター長

環境・社会面に明確にポジティブな影響が創出される「インパクト」に注目が集まる

コロナ禍においても、SDGs債市場の拡大という傾向は変わりがないと想定しています。ただし、その内容については最近変化が見られるようになってきました。これまで世界のSDGs債市場(グリーンボンド、ソーシャルボンドおよびサステナビリティボンド)ではグリーンボンドが主流で8割ほどを占めていました。しかし、2020年上期の発行額を見ると、ソーシャルボンドが全体の3割近くにまで急速に伸びています。日本市場でも、2020年上期はソーシャルボンドの存在感が高まっています。

2020年のSDGs債市場では、「ソーシャル」に加えて、「インパクト」がキーワードになる可能性があると考えています。低金利環境が続くなか、SDGs債においても選別される傾向が見られるようになってきました。2020年はとても流動的な1年になると思われますが、環境・社会面に明確にポジティブな影響が創出される「インパクト」に注目が集まると見込んでいます。

世界のSDGs債の発行状況

種類別発行額の推移

種類別発行残高の内訳

発行額(2020年6月末時点)は、ブルームバーグによるグリーンボンド、ソーシャルボンドおよびサステナビリティボンドの判定基準に基づく。米国地方債および証券化商品を除く。ドル換算ベース

ブルームバーグのデータを基に、野村資本市場研究所作成

日本の発行体によるSDGs債の発行状況

種類別発行額の推移

種類別発行残高の内訳

発行額(2020年6月末時点)は、ブルームバーグによるグリーンボンド、ソーシャルボンドおよびサステナビリティボンドの判定基準に基づく。ドル換算ベース

ブルームバーグのデータを基に、野村資本市場研究所作成

パネルディスカッション 『SDGs債に対する取り組みとポストコロナへの期待』

SDGs債を発行する発行体の担当者と投資家を交えたパネルディスカッションを行いました。
SDGs債の発行を通じて感じた世の中の変化や、投資家が発行体に期待すること、ポストコロナにおけるSDGs債投資についてなど、さらなるSDGs債市場の発展に向けて議論を交わしました。

パネリスト

旭化成株式会社 財務部財務室課長 松本 啓 氏

独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 経理資金部担当部長 上橋 勇 氏

独立行政法人 日本学生支援機構 財務部 次長 池田 佳弘 氏

野村アセットマネジメント株式会社 運用部 シニア・インベストメント・オフィサー(債券担当) 長生 太郎

鉄道・運輸機構(JRTT)本社よりオンラインで参加

モデレーター

野村證券 デット・キャピタル・マーケット部ESG債担当部長 相原 和之

社会課題への取り組みを広く伝え、新しい投資家を発掘

旭化成
松本 氏

旭化成は、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3セグメントによる事業を展開しています。「ヘーベルハウス」や「サランラップ」などはよく知られている当社のブランドです。

当社では2020年6月、初となるSDGs債を発行しました。当社が所有する水力発電所の改修工事が資金使途です。このSDGs債の発行にあたっては大きく2つを期待していました。1つは、投資家の定着であり、新しい投資家の発掘です。初のSDGs債にも関わらず24の投資家から投資表明をいただき、期待以上の効果を感じています。また2つ目は、当社の社会課題への取り組みを社内外にアピールするということ。この狙いについても、投資家とのIRやメディアでの紹介などによって大きなメリットを得ることができました。

SDGs債への投資家の関心は、このコロナ禍によってさらに高まっているのではないかと感じています。今回はIRで投資家の方と直接お話もしましたが、本業での取り組みも含め、SDGsに関わる質問を多く受けたことがとても印象的でした。今後は、SDGs達成に貢献する事業や企業を選別して投資するといった方向性が一層強まってくるのではないでしょうか。また、SDGs債については継続的な発行へのニーズが高いことも強く感じました。今後も引き続きSDGs債の発行を検討していきたいと考えています。

幅広い年限で、CBI認証が付いた質の高いSDGs債を継続的に発行

鉄道建設・運輸施設整備支援機構
上橋 氏

鉄道・運輸機構(JRTT)は、国内の鉄道・船舶による交通ネットワークの整備支援を総合的に行う独立行政法人です。これらの公共交通基盤が整うことは、より効率的な人と物の移動を実現し、CO2排出量を削減するなど、環境負荷低減につながっています。

JRTTでは2017年からSDGs債の取り組みを開始し、グリーンボンドを発行してきました。これらの債券について投資家から継続して発行してほしいという声が多く寄せられ、2019年5月からはアジア初となる厳格な国際基準を設けるCBIからの認証を取得したサステナビリティボンドを四半期毎に発行しています。JRTTが発行するサステナビリティボンドは中期・長期・超長期と年限が幅広いという特徴を持ち、現在、113の投資家から投資表明をいただいています。また、一般財団法人や公益財団法人、学校法人、地方の金融機関など、投資家の業態も多様な分野に広がっています。

コロナ禍の影響によって今後、人々の生活様式にも変化が生じると思います。しかし、JRTTが支える交通ネットワークの重要性は変わりありません。JRTTの企業価値をさらに高めるとともに、SDGs債市場の発展に寄与していくために、これからもJRTTならではの質の高いSDGs債を継続して発行していきます。

Climate Bonds Initiative(気候債券イニシアチブ)、低炭素経済に向けた大規模投資を促進する国際NGOで、環境改善効果について厳格な基準を設けている。

日本の「教育の機会均等」を支えるために、ソーシャルボンドを発行

日本学生支援機構
池田 氏

日本学生支援機構(JASSO)は、わが国における教育の機会均等を制度的に支え、教育のセーフティーネットを担う独立行政法人です。中でも主力となるのが奨学金事業であり、日本の学生等のうち2.7人に1人(2018年度)がJASSOの奨学金を利用しています。

JASSOでは、2018年9月から、ESG評価機関からのセカンドオピニオンを取得した上で、ソーシャルボンドを発行しています。利息を付して貸与する第二種奨学金への使途を目的にしたものです。最近ではJASSOのソーシャルボンドへの関心も高まり、中には利回りにとらわれず投資いただく投資家の方も多くいます。日本の教育の機会均等を支え、次代の人材育成に資する奨学金にぜひ貢献したいというお言葉をいただき、胸が熱くなったこともありました。

コロナ禍の最中、6月に発行した債券ではそれなりの影響も見られましたが、コロナ禍以前の2月のものと同条件で発行でき、また新しい投資家からの投資表明もいただきました。改めてSDGs債に対する注目度の高さ、安定調達としてのソーシャルボンドの有効性を実感しています。今後もソーシャルボンドを継続的に発行し、SDGs債の拡大、そしてSDGsの達成に貢献していきたいと考えています。

責任ある投資家として、社会全体のSDGs達成に貢献していく

野村アセットマネジメント
長生 氏

野村アセットマネジメントは、野村グループの資産運用会社であり、国内外の投資家のみなさまから約50兆円の運用資産をお預かりしています。当社では、債券の運用において、ダウンサイドリスクの抑制をもっとも重視し、その投資判断に活用するために債券に特化したESG評価モデルを自社で開発しています。また、グローバルな運用体制も特徴の1つです。

投資家の観点から見ると、SDGs債に大切なことが2つあります。1つはできるだけ継続して発行していただきたいということ。もう1つは情報の開示です。SDGs債を評価して的確な投資判断を行うためには、情報の開示が十分になされていることが大前提となります。

コロナ禍の影響を受けて、今年3月、世界の金融市場が混乱に陥りました。その際、当社は欧米企業の社債について分析を行ったのですが、とても興味深い結果が得られました。ESG課題に真摯に取り組んでいる企業では相対的に値下がり幅が抑制されるという傾向が見られたのです。SDGsの取り組みは、発行体の信用リスクに直結する非常に重要な要素です。当社では、このような観点からの投資を進めることによって、社会全体のSDGs達成に貢献していきたいと考えています。

野村グループの目指すサステナブルファイナンス

野村グループの目指す
サステナブルファイナンス

野村グループは、気候変動対策や社会課題を解決するための資金需要と、投資を通じて社会に貢献しようという投資家との橋渡し役を担っています。「社会課題の解決を通じて持続的な成長を実現する」という経営ビジョンのもと、SDGsの達成に向けた取り組みやSDGs債市場の発展をサポートし、ステークホルダーのみなさまとともに、真に豊かな社会の創造を実現します。

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