家計から見た教育投資の価値

野村資本市場研究所 宮本 佐知子

要約

  1. わが国の大学進学率は上昇が続いている。2019年の大学進学率は53.7%と過半にまで達しており、高校卒業後に大学へ進学するライフコースが一般的となってきている。大学進学率が上昇してきたのは、高校卒業後の進路として、大学進学を選ぶ人が増えたためであり、そうした動きは男女共に見られてきた。
  2. 本稿の目的は、大学進学が一般的になった現在、教育投資の価値はどれくらいかを考えることにある。大学進学率が高まった一因として、子どもを大学へ進学させることにより、何らかのメリットがあると家計が期待していることが考えられる。本稿では特に、教育を受け学歴を取得することを促す経済的インセンティブに注目し、大学進学を家計による投資と捉えて、学歴と卒業後の所得との関係から「大学教育投資の価値」を検討した。
  3. 直近のデータを用いて大学教育投資の収益率を求めると、男性は6%、女性は8%と、高い水準であることがわかった。これらは卒業後の勤務先が民間企業等の民営事業所である場合だが、国及び地方公共団体の公営事業所を含めてもほぼ変わらない結果が得られている。
  4. このように、大学教育投資の収益率は高水準であるため、家計にとって大学教育投資は、他の投資可能な資産と比べても、魅力的な投資対象である。平成から令和の時代となり、社会・経済環境は大きく変わってきたが、大学教育投資の価値は家計にとって依然として高いと言えよう。
  5. 教育とは、個々人にとっては能力を高め将来の可能性を広げたり収入を増やすための投資であり、国にとっても国際競争力を維持するために必要不可欠な投資である。社会全体という視点で考えると、学ぶ機会の提供とそのための手段確保は重要な政策課題であろう。
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