誰一人取り残さない社会の実現を目指して ~ソーシャルボンドを通じて若い世代への支援を考える~

国内で唯一の家計地震保険の再保険会社であり、その保険料の管理・運営においてSDGs債に積極的に投資を行っている日本地震再保険株式会社(以下、日本地震)と、ソーシャルボンドを定期的に発行している独立行政法人日本学生支援機構(以下、JASSO)によって、SDGs債市場の更なる発展を目指したエンゲージメント対談が行われました。

参加者

日本地震再保険株式会社 独立行政法人
日本学生支援機構
野村證券株式会社
  • 業務部業務課 課長代理 宮﨑 衣子氏
  • 財務部財務課 主任 田代 裕太郎氏
  • 奨学事業戦略部奨学事業戦略課 主任 宮田 博史氏
  • 財務部資金管理課 主任 利根川 湧生氏
  • サステナブル・ファイナンス部 担当部長 相原 和之

相原:

本日はエンゲージメント・ミーティングとして、投資家である日本地震再保険様と発行体である日本学生支援機構様より、事業概要やSDGsの取り組み等についてお話をお伺いしたいと思います。まず、日本地震再保険様より事業内容についてお伺いできますでしょうか。

日本地震再保険 田代氏

田代氏:

日本地震は、1966年の地震保険制度発足以来、国内の家計地震保険を一手に引き受ける再保険会社として、経営理念に「家計地震保険制度の健全な運営を通して、豊かで安全な社会制度の維持・発展に寄与し、広く社会から信頼される企業を目指す」 ことを掲げ、その実現に取り組んでいます。これまで、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などの地震やそれに伴う火災・津波災害に対し、日本地震の最大の使命である再保険金の迅速・確実な支払いに努めてきました。地震保険は、これらの災害により被災された方々の生活を支える重要な役割を担うことから、政府、損害保険会社、日本地震の三者間で再保険制度が整備され、 官民一体となって迅速・確実に地震保険金をお届けできるよう運営されています。

相原:

地震保険の仕組みについても簡単にご説明いただいてもよろしいでしょうか。

日本地震再保険 宮﨑氏

宮﨑氏:

元受損害保険会社(一般のご契約者様から直接に保険を引き受ける損害保険会社)が地震保険契約者様から受領した地震保険料は、まとめて日本地震に出再(再保険)いただいています。日本地震はさらに政府と損害保険会社に出再し、平時は政府とともにご契約者様からいただいた地震保険料を管理・運用しています。有事においては、日本地震は政府と元受損害保険会社の間に立ち、保険金の支払い管理を一手に引き受け、元受損害保険会社を通じて、被災されたご契約者様に迅速・確実に保険金をお届けする役目を担っています。地震によって大災害が起き、膨大な金額の支払いが必要になった時でも、政府のバックアップにより信頼性の高い仕組みとなっています。

相原:

地震が起こると加入者が増える傾向にあると思うのですが、加入者数と保険料には相関関係はありますか。

宮﨑氏:

地震発生直後は地震保険に加入される方は増える傾向にあります。しかし、地震保険の場合は一概に加入者の方が増えると保険料が下がるという仕組みではありません。さまざまな地震発生モデルや条件に基づいて損害保険料率算出機構が公平に料率を計算して保険料をいただく仕組みとなっているので、例えば大地震発生翌年の保険料率が高くなるといったこともありません。余談ですが、支払い対象の地震は国内で起こった地震の他、海外で起こった地震による津波などで国内に被害があった場合も支払いの対象となる場合もあります。

相原:

地震保険は公平性、安定性にも優れた制度と理解しました。SDGsには誰一人取り残さないという考えがあるので、日本地震再保険様とSDGsは関連性が高いと感じていますがいかがでしょうか。

田代氏:

はい。南海トラフ地震や首都直下地震については、近い将来に必ず発生するといわれている大規模地震として耳にされたことがあるのではないでしょうか。ただし災害は、これらのような大地震だけではなく、激甚化・頻発化する気象災害や、パンデミック、サイバー攻撃などさまざまなものがあり、しかも同時発生も想定する必要があります。そのため日本地震は、地震保険に特化した再保険会社の責務として、有事の際に迅速に再保険金を支払える態勢の整備を進めるとともに、災害が発生した際の社会の被害を最小限に抑える防災力の強化や、災害を乗り越え速やかに回復するレジリエンスの向上等、社会課題の解決に向けた取り組み、つまりSDGs推進の取り組みも重要であると認識しています。例えば、気候温暖化は一見、地震保険とは関係なさそうに思われがちですが、気候温暖化が進むと海水面が上昇し、大地震発生時の津波による被害がより広範囲に及ぶことになります。他にも、地震対策を目的としたものでなくとも都市防災の整備や建物の強靭化などは、結果的に地震災害の減少に貢献するはずです。このようにSDGsを推進することによって、将来的に保険料が安くなるなど地震保険にとっても大きなメリットがあり、地震保険の普及に繋がるとともに、社会全体として地震に対するレジリエンスが向上する好循環が生まれることになります。これは一例ですが、日本地震としては、SDGsの推進、ESG投資の拡大に取り組んでいきたいと考えています。

相原:

決して避けられない自然災害等による被害をいかに最小限に抑えるか、日本地震再保険様の事業とSDGsの取り組みは、まさに切っても切れない関係ですね。それでは次に、日本学生支援機構様の概要についてお伺いできますでしょうか。

利根川氏:

JASSOは、奨学金貸与事業を行っていた日本育英会と留学生関連事業を行っていた4団体が整理・統合することで、2004年4月に設立されました。設立にあたっては、教育の機会均等に寄与するために学資金の貸与及び支給その他学生等の修学の援助などを通じて、次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資することなどを目的としています。

事業内容に関しては、日本国憲法第26条に定められた「教育を受ける権利」や教育基本法第4条に定められた「教育の機会均等」を支えるための奨学金事業が1つ目の柱としてあります。2つ目の柱は、日本人留学生の派遣、外国人留学生の受入れの両面から留学生を支援する留学生支援事業、そして3つ目の柱が、キャリア教育・就職支援や障害のある学生等を支援する学生生活支援事業です。奨学金事業は大きく2つに分けられ、原則として返還義務のない給付奨学金と、返還の必要がある貸与奨学金があります。更にこの貸与奨学金は、無利息の第一種奨学金と、利息がつく第二種奨学金に分かれています。

その中で、JASSOソーシャルボンドの発行によって調達した資金については、利息のある第二種奨学金の在学中の貸与財源に全て充当させていただいています。原則として返還義務の無い給付奨学金は、2017年に開始した制度で、事業開始以来5年間で約66万人に対して累計額約2,900億円を給付しています。貸与奨学金は、旧日本育英会による昭和18年の事業開始以来、79年間で約1,449万人に対して累計額約23兆円を貸与しており、学生の約3.1人に1人が利用する制度となっています。

相原:

約80年もの長い歴史があり、学生の約3.1人に1人が貸与奨学金を利用されていると聞いて、改めて奨学金制度は日本の教育制度において欠かせないものになっていることを実感しています。日本学生支援機構様は、2018年からソーシャルボンドのご発行を継続されていらっしゃいますが、その特徴やご発行の目的、フレームワーク等についてお伺いできますでしょうか。また、これまでの発行実績についても教えてください。

日本学生支援機構 利根川氏

利根川氏:

JASSOソーシャルボンドの特徴として、主に3つ挙げられます。まず1点目は、国内債券市場において教育関連のソーシャルボンドの発行事例が少ない中、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の達成に貢献している銘柄であること。2点目として、国内債券市場では希少な2年債として6月・9月・11月・2月の年4回、定例発行していること。3点目として、格付けについては、R&I(格付投資情報センター)からAA+、JCR(日本格付研究所)からAAAを取得しており、国債と同水準の格付のため安全性の観点でも投資しやすい商品性であると思います。

次に、JASSOソーシャルファイナンス(ボンド及びローン)のフレームワークについてですが、国際資本市場協会(ICMA)が定めるソーシャルボンド原則等に基づき策定しています。投資家のみなさまから投資していただいた資金は、その全額を奨学生の在学中の貸与財源にのみ活用しており、みなさまにSDGsの目標4への貢献がご理解いただきやすいものになっています。JASSOがソーシャルボンドを発行する目的ですが、1つ目は、 やはり業務継続に必要な資金の調達ですので、投資家の裾野拡大と中長期的な視点での安定調達を実現することにあります。2つ目に、より多くの方々にJASSOの社会的課題への取り組みや貢献についてご理解いただくことです。3つ目に、JASSOがソーシャルボンドの発行を開始した2018年は、まだSDGs債の黎明期でしたが、今後さらに発展・拡大してもらいたいと感じており、自らもソーシャルボンドを供給することで、少しでも国内債券市場におけるSDGs債の普及、発展に貢献したいという思いがありました。

また、これまでのJASSOの債券発行実績については、2004年に独立行政法人として設立されて以降、直近9月に発行した第72回債まで発行しています。JASSOソーシャルボンドとしては、2018年の第52回債から発行しており、年限2年、1回の起債あたり300億円、年4回の定例発行を継続しています。日本地震再保険様のように、社会貢献に資する我々の事業内容をご支持いただける方々から投資表明を頂戴しています。最近では、ESG投資に対する意識の広がりとともに、自治体様や学校法人様などのほか、事業会社様から投資表明いただけるケースが増えています。直近の投資表明の件数については、第70回債が29件、第71回債が70件、第72回債が90件と右肩上がりで増加しており、累計は330件に達しています。発行利回りについては、国内金利等の影響を受けて、実質利回り0%での発行が続いていましたが、昨年夏以降は金利上昇傾向にあり、足許では利回り面でも関心を示していただける投資家が増えています。

相原:

新たに投資表明をされる投資家様が回号を追うごとに増えていらっしゃるのは、市場金利上昇に伴う発行条件の改善もプラスに作用していると思いますが、高等教育を継続される若い方に対してのご支援という日本学生支援機構様の特徴あるご事業に対して、投資家様から多くの賛同を集めていらっしゃるということが最大の要因かと思います。では、日本地震再保険様が日本学生支援機構様のソーシャルボンドへの投資を決断された背景を教えていただけますでしょうか。

田代氏:

日本地震は、地震再保険会社としての公共性を踏まえ、運用収益の獲得と社会課題解決の両立を目指し、環境・社会面でより良い企業・事業への資金提供を目的としたESG投資に取り組んでいます。投資先の選定にあたっては、財務情報だけではなく、環境や社会問題への対応など企業のESGに関する取り組みも加味して総合的に判断しています。日本地震の2022年度のSDGs債への投資実績は合計21件となりました。2022年度は支払保険金増加により有価証券投資額を抑制したため前年度に比べ減少しましたが、2020年度以降は同投資額の10%を超える水準でSDGs債への投資を継続しています。この中には、日本学生支援機構様が発行されたソーシャルボンドも含まれています。

日本地震再保険のSDGs債への投資実績

(件)

  2020年度 2021年度 2022年度
グリーンボンド 5 5 7
ソーシャルボンド 15 23 5
サステナビリティボンド 5 7 7
サステナビリティ・リンク・ボンド - 2 2
合計 25 37 21

日本地震では、保険会社として積み立てている多額の責任準備金を主に債券投資で運用しており、日本学生支援機構様が発行される「日本学生支援債券」も以前から購入させていただいています。将来の社会を担う多くの学生を長年に渡り支援されている事業に対し、信頼をもって投資させていただきました。2018年以降もソーシャルボンドを継続的に購入させていただいています。また、我々日本地震は、IR(Investor Relations)の場をはじめとしたさまざまな機会を捉え、発行体との建設的な対話を通じて、「気候変動対策」や「地震対策」への具体的な取り組みを進めていただけるよう働きかけています。エンゲージメントを通して、発行体のSDGsへの理解を深め、活動を促すことはもちろん、日本地震の取り組みにもご理解をいただきたいと考えています。なぜなら、地震に対する備えは、発行体の役職員、サプライチェーンや関係先の人々を、直接守るためのものだからです。発行体において、これらが不十分であれば、発行体様のSDGsの取り組みが進められなくなるだけでなく、事業の継続自体が危うくなることを認識いただき、行動を促すことが重要であると考えています。

相原:

日本学生支援機構様、日本地震再保険様は、いずれも極めて公共性が高く、社会にとって必要不可欠な役割を担っておられるので、今回のようなエンゲージメント・ミーティングは非常に有意義なものであると思います。最近は地球規模の環境変化によって"観測史上初"といった言葉を日常的に目にしますが、改めて地震リスクに対する備えについてご説明いただけますでしょうか。

エンゲージメント対談の様子

宮﨑氏:

大きな被害が予想される南海トラフ地震や首都直下地震は、今後30年以内に70%~80%の確率で発生すると政府から発表されています。これは、学生の皆さんにとっては人生の間で、かなり高い確率で起こることを示しています。1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災では、若い学生の方でも多くの犠牲者が出ました。最近では、2016年の熊本地震でもこれからの活躍が期待された学生の命が奪われました。私たちは地震が大きな被害をもたらすことはよく知っているはずなのですが、こうした地震に対する備えは十分なのでしょうか。学生に限らないことですが、備えの必要性は認識しつつも、何をやっていいか分からず、準備が不十分な人が多いのではないでしょうか。

地震の特性には、(1)発生頻度や大きさを統計的に把握することが困難であること(2)損害が時に異常に巨大なものとなる可能性があることがあり、保険として取り扱うことが難しいと考えられています。先ほど地震保険の仕組みについては簡単にお話させていただきましたが、地震保険は1964年の新潟地震を契機に、民間の損害保険会社のみで運営することが難しいことから、政府が再保険を通じて関与する、つまり、官民共同で運営することで、国民に対し低廉な保険料で安定的にご提供することが可能になりました。また、地震保険料が高いと感じている方もいらっしゃると思いますが、地震保険はいざという時の生活の安定を目的とした極めて公共性の高い保険なので、保険料には保険会社の"もうけ"は含まれておらず、消費者がより加入しやすい水準に設定されています。さらに、保険料から保険金や経費を差し引いた残りは、すべて将来の保険金支払いに備えて、準備金に積み立てられています。我々はこうした公共性が高い地震保険を普及させること自体が、SDGsの目的に沿うものだと考えています。

地震への対策は、(1)「第一の課題」として、まず「命を守ること」が最も重要になります。これには、建物の耐震化、耐火化や、津波防災施設や防潮堤の設置などの防災・減災の取り組みを進めていく必要があります。また、"すばやく躊躇なく避難する"といった皆さんの意識を高める地道な取り組みも必要になります。(2)「第二の課題」として、地震後に起こる経済的な困難からの脱却が重要になります。住んでいた家が壊れた傾いたといったことになれば、大きな修繕が必要になるでしょうし、家を失ったうえにローンだけが残るといった厳しい状況になることもあり得ます。つまり突然人生に関わる思ってもみない経済的な困難に直面することになってしまうかもしれないのです。地震の被害から生活を再建するには、まとまったお金が必要になるのですが、公的扶助だけでは全く足らないのが現状であり、自助での備えの一つとして地震保険があるのです。

日本地震は、これまで「第二の課題」に対応するため、地震保険の運営を通じて災害により被災された方々の生活を支える重要な役割を担い、実際に地震が発生した時に、保険金を確実に支払うための体制整備に万全を期してきました。しかし、事前の備えとしての地震保険の普及には、未だ十分と言える状況にはなく(直近の世帯加入率34.6%)、地震による被災後の生活を立て直す資金をできるだけ多くの人々に支援できるよう、YouTubeチャンネルの開設も含め、普及に向けての取り組みを推進しているところです。

そして、現在、取り組みを強化しているのが、「第一の課題」への対策です。日本地震では、今回の「日本学生支援債券第71回債ソーシャルボンド」の投資表明にあたって、学生の皆さん向けに「みんなで地震対策しよう!」と呼びかけるリーフレットを作成しました。このリーフレットについては、日本学生支援機構様にも、ウェブサイトに掲載いただいただけでなく、大学関係者様向けのセミナーでも取り上げていただきました。今後も他法人様とコラボレーションできないかと考えており、リーフレット作成や今回のエンゲージメントはその出発点になるものです。

日本再地震保険 Youtube公式チャンネル

相原:

地震等の災害について、日本学生支援機構様の特別な取り組みをご紹介頂けますでしょうか。

宮田氏:

通常、奨学金の採用時期は決まっていますが、地震に限らず、災害等により家計が急変した学生の皆さんに対しては、給付奨学金であれば家計急変採用、貸与奨学金であれば緊急・応急採用として柔軟に奨学金採用を行っています。また、奨学金をご返還されている方に関しては申請をしていただければ、一定期間の返還期限の猶予や返還額を減額して返還の負担を軽減するといった対応もしています。また、居住する住宅の半分以上が倒壊したり、床下浸水をしたりした学生の皆さんに対して、早期に元の生活に戻り、学業をつづけていただけることを目的として、返す必要のない災害支援金といったものも支給させていただいています。

利根川氏:

また、日本地震再保険様からお話があったとおり、リーフレット「日本地震再保険より学生の皆さんへ みんなで地震対策をしよう!」は、投資表明としてではありますが、JASSOのHPサイトや大学関係者が集まるセミナー、ソーシャルボンドIR資料の中でご紹介させていただくなど、学生の皆さんへの地震に対する啓蒙活動に間接的に貢献させていただいています。

相原:

柔軟にご支援されていらっしゃるんですね。少しお話は変わりますが、みなさまのご入社、ご入構のきっかけ、業務のやりがい等お聞かせいただけますでしょうか。

日本学生支援機構 宮田主任

宮田氏:

両親が教職についており、私も将来は学生を支援できるような仕事がしたいと思っていました。教職につくことも考えましたが、真に支援を必要としている多くの学生様に必要な支援が行えることに魅力を感じて入構しました。現在、奨学金の制度についてさまざまな面から検討する部署に所属していますが、日々の生活のなかで進学率の向上を示す数値を見たり、JASSOの奨学金が利用者の人生に良い形で貢献できたという話を耳にしたりすると非常にやりがいを感じます。

利根川氏:

私は大学の卒業論文で教育のことを書くほど教育が好きで、奨学金も利用していたので、JASSOという組織も知っていました。多くの学生様をサポートできるところに魅力を感じて入構しました。実際に資金管理課で働いてみて、間接的ではありますが、日々多くの学生様のためにできていることの実感があり、充実した毎日を過ごしています。

宮﨑氏:

日本地震の職員は30名程度で、その多くが中途採用です。私も学生時代は教育を志しており、日本学生支援機構様の奨学金を利用させていただき大学を卒業しました。卒業後は一般の事業会社で働いていましたが、いざという時に人の役に立てる仕事を続けていきたいという気持ちがあり、日本地震の官民共同で運営する保険という公共性の高さに共感して入社しました。省庁や元受損害保険会社との連携・協力体制の要として、国民のみなさまの安定した生活に寄与できることに、非常に大きなやりがいを感じています。

田代氏:

私は、前職では有価証券運用業務に携わっていました。私も、やはり公共性の高さが最大の入社動機でした。2021年2月及び2022年3月に発生した福島県沖での地震ではそれぞれ2,000億円を超える再保険金をお支払いしましたが、日常の資産運用が有事の再保険金支払いに直結していると強く実感しています。有事に備えた運用ですから、流動性と安全性を確保しつつ、収益性も獲得していくことが求められます。さらに今後のマーケットの見通しを自分たちで想定するのとは別に、大地震発生時のマーケットの状況やその後の推移について、市場参加者の方にアンケートという形でお聞きして常に想定しておくといったこともしており、そこに難しさと面白さを感じています。

相原:

それぞれ事業におけるESGの考え方やポリシー等が反映された独自のカルチャーや行動指針等がもしあれば、お聞かせいただけますか。

田代氏:

日本地震では最低でも年に1度、各社員が自宅まで徒歩で帰宅する徒歩帰宅訓練を行っています。私は自宅まで少し距離があって大変ではありますが、気候状況や自身のコンディションでどの程度歩けるのか、道中の広域避難場所やコンビニ等を平時に確認しておくのは、いざという時の備えになると感じています。

宮﨑氏:

日本地震は地震に対する専門会社でもあるので、大地震の発生を想定した全社演習という連携訓練を行っています。また、自宅の備えについても東京都が公表しているチェックシートで定期的に確認をする等、日頃から防災の意識を社員自身が高めておく取り組みをしています。さらに、地震保険の普及促進や防災減災の取り組みとして、日本損害保険協会と連携し、法学部・経済学部の大学生向けに地震保険制度等に関連した寄付講座を行ったりもしています。

利根川氏:

JASSOでは、防災に関しては、今まさにオフィスの耐震強化を含めた増改築工事を進めていることに加え、定期的な避難訓練や災害等非常時最終要員の設置等の備えをしています。災害時においても奨学金の支払い等の業務に支障が出ないように、各部署が非常事態の際にも出勤できるような体制を構築しています。

宮田氏:

JASSO独自の考え方やポリシーを表すことの1つとして、我々は貸与奨学金を返済していただくことを「返還」と称しています。これは、返していただいたお金が次の学生様の貸与奨学金の原資となる、循環するものと捉えて、こうした言葉を使っています。

相原:

最後に、このエンゲージメント対談をお読みになっている方々や学生の皆さんに向けてコメントをお願いします。

利根川氏:

JASSOは奨学金を真に必要とされている学生の方々のために、今後も新たな奨学金制度の検討とその内容についての情報発信を継続して行ってまいります。学生の方々には、是非それらの情報をキャッチしていただいて、最大限活用していただきたいと思っています。また、JASSOの理念や事業活動についても是非知っていただき、就職先の選択肢の一つとして考えていただけたら大変嬉しいです。

宮﨑氏:

私もデジタルネイティブの若い方々には、さまざまな制度や多くの情報に触れていただきたいと思っています。世の中を動かすのは、情報に対して新しい感性を持っていらっしゃる若い力です。これから日本の社会を担っていく若い人の意識が変わらなければ、社会がより良くなっていくための変化は生まれません。"防災・減災の大切さ、経済的困窮を招かないための地震保険の必要性の理解"についても同様で、ご自身で判断し、災害の備えについても積極的に行動していただきたいと思っています。また、これから社会人となり活躍される学生の皆さんも、将来、住宅を購入されることがあるでしょうから、その時には、地震保険についても十分に検討していただきたいと思っています。

相原:

本日は、非常に有意義なエンゲージメント・ミーティングになりました。従来の債券では、発行体様と投資家様が直接顔を合わせ、互いの事業内容や社会的意義について対話する機会を持つことは、一般的ではなかったものと認識しています。近年、ESGに関する意識の高まりとともに、債券市場におけるESG債の割合が急速に高まっています。投資家の立場から見ると、償還が予定された上で利回りを得られる債券としての商品性に、ソーシャルボンドであれば社会課題の解決に、グリーンボンドであれば環境改善に繋がるといったように、投資する動機が加わることになります。現在は、債券市場のうち約4割程度をESG債が占めていますが、この比率は増加基調にあります。野村證券としても、発行体様と投資家様をお繋ぎし、かつ環境課題、社会課題の改善に貢献するESG債のさらなる普及に取り組んでいきたいと考えています。

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