スチュワードシップ・コードの再改訂

野村資本市場研究所 片寄 直紀 、西山 賢吾

要約

  1. 金融庁は2019年12月20日に「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫の改訂案を公表した。2020年1月31日までパブリックコメントの募集を行っている。この改訂版コード(案)は、SSコード及びCGコードのフォローアップ会議の意見書においてSSコードの次回改訂を見据えた当面の課題として挙げられた事項や、英国のSSコードの改訂を踏まえ、金融庁のSSコードに関する有識者検討会で議論された内容を取りまとめたものである。
  2. 改訂版コード(案)では、有識者検討会での議論を踏まえ、主に(1)日本の上場株式以外の資産に投資する機関投資家へのSSコードの適用、(2)サステナビリティに関する課題の考慮、(3)企業年金等のアセットオーナーによるスチュワードシップ活動、(4)運用機関の議決権行使に係る賛否の理由の公表、(5)機関投資家向けサービス提供者に関する原則、に関して改訂が行われている。
  3. 今回の改訂は、機関投資家の活動に大きな変更をもたらすものではないと思われるものの、議決権行使の賛否理由の公表や、ESG要素を投資プロセスに組み込むESGインテグレーションが進められると考えられる。また、議決権行使助言会社の組織体制といった点にも影響を与えるだろう。インベストメント・チェーン全体の機能向上という点も踏まえ、SSコード受入れ機関が、企業価値向上・企業の持続的成長と、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大というSSコードの目的を改めて意識し、機関投資家と企業との建設的な対話に関して役割を果たすことが期待される。
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