2019年の議決権行使状況と今後の注目点

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2019年6月開催の株主総会では株主提案の可決事例が見られたり、低ROEや不祥事などを理由に経営トップ取締役選任議案の平均賛成比率が低い事例が増えるなど、興味深い動きが見られた。しかし、こうした動きは2019年の株主総会で突然生じたわけではなく、ここまで進められてきた一連のコーポレートガバナンス改革の効果が表れ始めたものとして評価できるであろう。
  2. 2020年以降に向けての議決権行使基準に関する注目点は、(1)社外取締役増員(3分の1以上)への動きがさらに高まるか、そして、(2)親子上場企業、特に上場子会社に対するガバナンス強化を求める方向が考えられる。さらに、議決権行使基準への反映よりは、対話のテーマとして取り上げられることが多くなると想定されるものとして、(3)ダイバーシティ、(4)政策保有株式と議決権行使との関連付け、(5)委員会の委員長に独立社外取締役を求めることや、(6)任意の指名、報酬委員会であっても、各委員会の構成では独立社外取締役を多数とすることを求める、などが挙げられよう。
  3. 企業と機関投資家との相互理解が深まることがコーポレートガバナンス改革の主題ではあるが、両者にはまだ認識ギャップが残っている。両者のギャップが完全に埋まることは難しいであろうが、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議から出された意見書(4)に示された、「議決権行使に至るまでの対話活動についての説明や株主総会議案の賛否の理由、対話活動及びその結果、情報提供の充実」はギャップの縮小に向け重要と考える。
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