欧州公的年金基金の気候変動への対応
-スウェーデンAP基金、仏FRR、ノルウェーGPFGの事例を中心に-

野村資本市場研究所 林 宏美

要約

  1. 金融安定理事会(FSB)の下部組織であるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が2017年6月に公表した最終提言(TCFD最終提言)では、インベストメントチェーンの頂点に位置付けられる年金基金等のアセット・オーナーも、投資先企業による取り組みを促す役割を果たすべく、一定の情報開示が求められている。2018年11月に英国のNGOが大規模な公的年金基金の取り組み状況を評価した報告書では、TCFD最終提言に則した情報を開示しているか、開示する方針にある年金基金が全体の17%にとどまった。
  2. 気候変動への取り組みが高く評価されている欧州公的年金の事例としては、スウェーデンのAP基金、フランスのFRR、ノルウェーGPFG等が挙げられる。AP基金は、2019年、法律により責任投資と高いリターン追求の両立が求められるようになった。AP基金やFRRは、再生可能エネルギー事業等への投資を可能とする取り組みを推進しているほか、指数提供業者との提携を通じて低炭素関連指標の開発・拡充を進めるなど、さまざまな活動を展開しはじめている。
  3. 欧州の公的年金基金による気候変動への対応としては、従来化石燃料企業からの投資引き揚げ(ダイベストメント)を通じて、気候リスクの低減を図る動きが目立っていたが、近年はその取り組みが多様化している。ダイベストメントよりもエンゲージメントや議決権行使などを通じて、企業に気候変動への対応を促す傾向が前面に出ている。また、再生可能エネルギー事業等への投資を拡大できるよう、運用方針を変更する動きも目立つ。
  4. 大規模な公的年金による気候変動への取り組みは、他の機関投資家に及ぼすシグナル効果が大きいと見られる。それらの取り組みが、気候変動によるリスクや機会を示す各種指標データの蓄積、標準化など、上記に挙げた課題解消に寄与することも期待される。
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