気候変動対策で世界のリーダーを目指す「欧州グリーンディール」

野村資本市場研究所 江夏 あかね、磯部 昌吾

要約

  1. 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は2019年12月11日、脱炭素と経済成長の両立を図ることを目的とした工程表である「欧州グリーンディール」を公表した。同工程表は、2019年12月1日に就任したフォンデアライエン欧州委員長が最優先政策に掲げる気候変動対策の一環として位置付けられる。
  2. 欧州グリーンディールで注目されるのは、気候関連目標への野心的なアプローチ、低炭素経済社会への移行に関する支援、サステナブルファイナンス戦略の3点である。2020年第3四半期に公表予定のサステナブルファイナンス戦略では、(1)サステナブル投資に関する基盤強化、(2)サステナブル投資に関する特定可能性及び信頼性向上、(3)気候・環境リスクの金融システムへの組み入れ、といった3つの方針が掲げられた。
  3. 欧州グリーンディールは、基本的にはEU域内を対象としているものの、日本を含めたEU域外の国・地域に影響が及ぶ可能性が高いことが示唆された。同時に、欧州グリーンディールの実現に向けて、サステナブルファイナンス戦略を通じて、金融市場にもタクソノミー、開示、ラベル、EUグリーンボンド基準(EU GBS)、健全性規制といった複数の側面から影響が及ぶ可能性があることも示された。
  4. 世界に先駆けて包括的な気候変動対策に取り組むEUが示した欧州グリーンディールの各項目に関する今後の進捗や実効性等に対して、世界各国の政府、産業界、金融市場から注目が集まる状況が続くと想定される。
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