会社法改正とコーポレートガバナンス改革

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2019年12月11日に改正会社法が公布された。施行は2021年春頃と見られる。今回の改正点は多岐にわたるが、コーポレートガバナンスの観点からは特に、(1)株主総会資料電子提供制度や株主提案権の濫用防止、(2)取締役の個別報酬に関する方針の規定や、役員報酬に関する情報開示の拡充、(3)社外取締役設置の義務化などが注目される。
  2. 具体的な改正点としては、まず、株主総会資料の電子提供制度の創設と、一人の株主が提案できる株主提案の上限を10とすることが定められた。また、上場会社等において、取締役の個人別の報酬の内容が定款または株主総会で決定されない場合には、取締役会は、その決定方針の規定と方針の概要等の開示が求められるとともに、取締役個人別の報酬内容の決定方針等に関する事業報告書での情報開示拡充も定められた。さらに、上場企業においては最低1人以上の社外取締役選任が求められた。
  3. 今回の改正は現在行なわれているコーポレートガバナンス改革の方向性を大きく変えるものではないが、株主、投資家の関心はこれまで以上に、(1)合理的で株主が賛同しやすい内容の株主提案、(2)企業価値向上と役員報酬との関係への注目度の高まり、(3)社外取締役の重要性が高まる中、個別企業における社外取締役の位置づけと企業価値との関係、等に向かうであろう。
  4. グループガバナンスへの注目度が高まる中、少数株主の権利保護が論点として取り上げられるようになってきたものの、コーポレートガバナンス改革において「支配権の移転」に関するものは十分に議論されていない。その内容は会社法に留まるものではないが、例えば、TOB(株式公開買付)時の部分買付の問題や、事前警告型買収防衛策廃止企業が増える中での企業買収防衛の在り方などの議論が、今後進展することに期待したい。
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