EUベンチマーク規則の改正
-気候ベンチマークとESG関連開示-

野村資本市場研究所 江夏 あかね、磯部 昌吾

要約

  1. 気候変動問題への関心が高まる中、欧州連合(EU)では、低炭素経済に向けた投資を促すために、EU共通の気候ベンチマークを導入するEUベンチマーク規則の改正法が、2019年12月9日に成立した。今般の改正には、一定の要件を満たす株価指数等のベンチマーク(金融指標)に、気候ベンチマークというEU共通のラベルを使えるようにすることによって、気候変動問題の解決に寄与する資産への投資を促すという狙いがある。
  2. EUベンチマーク規則改正法の流れを受け、インデックスの運営機関各社も対応を始めている。気候ベンチマークの構成資産には、グローバル・ユニバースや米国・アジア等の地域ユニバースの組み入れも想定され、EU域外への投資に影響を与えることも考えられる。
  3. 欧州では近年、「サステナブル・ファンド」の運用資産残高が増加傾向にあり、環境・社会・ガバナンス(ESG)に対する欧州の投資家の関心が益々高まっている。今般の改正では、運営機関が気候ベンチマークの提供を行っていなかったり、金融指標においてESG目標を追求していなかったりする場合においても、その旨を開示しなければならないことから、投資家にとっては、ESGの観点から利用する金融指標の性質を把握しやすくなる。
  4. 気候ベンチマークという域内共通のラベルを、規制という形で導入するのはEUが初めてとみられる。EUのサステナブルファイナンス推進に向けたコミットメントを改めて明示するものと言えるものの、継続性や一貫性の確保が難しいことも想定される。気候ベンチマークがサステナブルファイナンス関連の金融商品への資金流入を後押しするのか、新たな市場インフラの実効性と今後の影響が注目される。
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