ASEANにおける再生可能エネルギーの利用状況と資金調達の動向

野村資本市場研究所 北野 陽平

要約

  1. ASEAN域内では、経済成長や人口増加等を背景としてエネルギー需要が急速に拡大する中、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの重要性が高まっている。ASEAN諸国はこれまで、エネルギー需要に対応するために、主に石油や石炭等の化石燃料に依存してきたが、足下では気候変動対応の一環で温室効果ガス排出削減目標を設定し、環境への負荷が少ない再生可能エネルギーの利用拡大に取り組む必要性に直面している。
  2. 域内の再生可能エネルギーの成長可能性は大きいものの、再生可能エネルギーの利用率は2017年時点で13%に留まった。普及が緩やかな要因の一つとして、必要な設備や事業への投資資金不足が挙げられている。主な資金提供者は開発金融機関であったが、2010年頃から国内外の商業銀行が融資提供者として存在感を高めてきた。また、株式での資金調達については、プライベート・エクイティ・ファンドが資金の出し手として一翼を担ってきた。
  3. ASEANは、一次エネルギー総供給量に占める再生可能エネルギーの割合を、2014年の9.4%から2025年までに23%へと高める目標を設定している。国際再生可能エネルギー機関及びASEANエネルギーセンターは2016年、当該目標の達成には、2025年までに計2,900億米ドル程度の投資が必要であると推計した。しかし、現状のままでは必ずしも十分な資金調達が可能とは言い難い。
  4. そうした中、新たな資金調達手段として、グリーンボンドの重要性が指摘されている。主な投資家は資産運用会社であるが、アジアの富裕層の間では近年、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を重視したESG投資への関心が高まっており、今後、富裕層によるグリーンボンドへの投資拡大も期待できる。ASEAN諸国による再生可能エネルギーの利用拡大は、低炭素経済社会への移行の実現のみならず、十分なエネルギーの確保を通じた持続的な経済成長の達成という点でも、重要な取り組みと言えよう。
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