コロナ禍を踏まえた英国金融規制の方向性
-気候変動対応と金利指標改革の重視の継続-

野村資本市場研究所 磯部 昌吾

要約

  1. 英国健全性監督機構(PRA)は、2020年5月7日、コロナ禍を踏まえた金融規制・監督に関する優先分野を発表した。また、同日に、英国の5当局で構成される金融サービス規制イニシアティブ・フォーラムは、今後12カ月の取り組み予定を公表した。
  2. 目下、英国の経済・社会はコロナ禍によって大きな打撃を被っているが、イングランド銀行(BOE)は、英国の大手銀行は想定される損失に耐えつつ実体経済への資金供給を維持できると評価している。こうした中で、BOEを含む英国当局は、金融機関をコロナ対応に専念させるべく一部の取り組みを先送りする一方、(1)気候変動対応、(2)金利指標改革、(3)ブレグジット対応という従来からの重点分野に対する姿勢を基本的に維持している。また、2020年3月に生じた急激な安全資産への逃避によって浮き彫りとなった金融市場の脆弱性に対処していく方針である。
  3. 英国当局の金融規制に対する取り組み姿勢は、従来からの課題に着実に対処するとともに、規制対応の見通しを立てやすくするという点で評価できるといえる。他方で、ブレグジットを巡っては、海外諸国との関係も含めた英国の将来的な金融制度の全体像を示せているわけではない。
  4. 今般のコロナ禍によって多くの金融機関の従業員が在宅勤務となっても、金融市場は機能している。今後も国内外の移動が制限されれば、場所にとらわれない業務運営が一層加速し、金融機関と周辺産業の集積を魅力としてきたロンドンの国際金融センターの在り方が変わることも想定される。また、感染リスクが残る限りは、対面でのコミュニケーションには従来よりも高い付加価値が求められ、オンラインとの棲み分けがより鮮明になることも考えられる。こうした環境変化の可能性に、英国の金融規制がどう応えていくのかも今後の注目点であろう。
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