グリーン/ブラウン資産の気候変動リスクの計測
-NGFSの取り組みから見える現状と課題-

野村資本市場研究所 磯部 昌吾

要約

  1. 気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)は2020年5月、欧州・アジア等の金融機関54社を調査した結果、グリーン資産とブラウン資産との間の信用リスクの差異を、金融機関が十分に見出せていないことを明らかにした。
  2. NGFSの調査によると、グリーンとブラウン資産のいずれも明確な定義がないため、金融機関は分析に必要なデータを十分に得られていない。また、従来のリスク計測手法が、気候変動リスクの捕捉に必ずしも適しているわけではないことも指摘されている。
  3. 他方で、金融機関はこうした課題を抱えつつも、貸出政策などにおいて気候変動対応へのコミットを行っている。NGFSは、その背景として、気候変動対応を企業の社会的責任(CSR)の一環として位置づけたり、レピュテーション(風評)やリーガル(法的)リスクの低減を目指していることを挙げている。
  4. このほか、NGFSは、合わせて公表した気候変動リスク管理についての規制当局向けガイドにおいて、銀行の自己資本規制の活用を選択肢の1つとして示したほか、気候変動リスクのシナリオ分析において共通のスタート地点となるNGFS気候変動シナリオについても公表している。
  5. 金融機関の気候変動リスク管理は、近年になって取り組みが急速に進んでいる分野であるが、定量的に計測するとなると、依然としてハードルは高い。確固たる定量的な分析結果が得られれば、プライシングへの反映という市場原理を通じて、金融機関の与信行動が気候変動対応と直結する道を開ける可能性がある。引き続き、金融機関の気候変動リスク計測がどのような進化を遂げるのか注目されよう。
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