純減が続く親子上場企業数

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 野村資本市場研究所で調べた、2019年度末(2020年3月末)時点での日本の親子上場企業数は、2018年度末(2019年3月末)から3社純減して259社となり、2007年度末以降13年連続で純減した。
  2. 親子上場が解消される最も多い事例は、上場親会社による子会社の完全子会社化であった。グループ経営の強化を目的とした再編の過程で実施されることが多い。また、親会社の持分減少による親子関係の解消事例が増加した。企業グループの再編に伴い事業ポートフォリオの見直しが進んできたものと考えられる。投資ファンドへの売却も見られた。
  3. 一方、新たな親子上場の事例を見ると、子会社の新規上場や、既上場企業を新たに保有したり、持分法適用会社を子会社化したりするものが見られた。これらも、主に企業グループの競争力強化を目指したものと考えられる。
  4. 「グループガバナンス」が、コーポレートガバナンス改革の次の課題として注目されている。親子上場の文脈では、「子会社のガバナンス強化」と、「親会社による子会社上場企業を有する合理的な理由の説明」などが主な論点と考えられる。前者では「独立社外取締役の増員(例えば3分の1以上や過半数)」、後者では「親子上場の合理性の検証」が特に重要となるであろう。株式市場の持つ資金調達機能を活かすためにも、ステークホルダーが親子上場に対し納得できるような説明を行うこと、そして企業グループの競争力を強化する中で親子上場をどのように位置づけ、経営戦略に織り込んでいくのかに注目したい。
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