コーポレートガバナンス改革
-第3の道の可能性-

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 日本企業のコーポレートガバナンス改革が進む中、監督と執行を分離したモニタリング・モデルの制度設計を選択する企業が増えている。指名委員会等設置会社への移行だけではなく、監査等委員会設置会社へ移行する、あるいは監査役会設置会社は維持したまま、任意の指名委員会、報酬委員会を設置することなどにより、東証1部上場企業では、過半の企業で実質的にモニタリング型に移行したと考えられる。
  2. こうした中、不祥事後の対応として商工組合中央金庫(以下、商工中金)が遂行したコーポレートガバナンス改革は独特である。商工中金は社長を含めた全取締役を社外から招聘(社長等3名は社内取締役、4名は社外取締役)するとともに、2名いる常勤監査役の内1名を社外監査役とした。
  3. 商工中金では、全取締役を社外から招聘することにより、従来の経営体制から完全に払しょくし、改革の遂行を明確にした。それとともに、モニタリング・モデルと、独任制である監査役会設置会社双方の利点を生かすために、社外者であっても常勤監査役とすることで社内の情報へアクセスし易くし、監督機能に実効性を持たせるようにした点が特徴的である。また、専門的かつ多彩なバックグラウンド(経歴)を有する役員(取締役、監査役)が、それぞれ期待される役割を果たすという意識を強く持って業務を遂行していることが、改革の実効を上げることにつながっていると理解できる。
  4. この「第3の道」とも言えるガバナンス改革は、商工中金が政府系金融機関という特別な位置づけのために遂行可能であった部分もあるため、他の企業がこれと全く同様な改革を行うことは容易ではないであろう。しかし、取締役を刷新して改革への意思を明確に示したことや、常勤者という社内情報へのアクセスのしやすさと、社外者というモニタリング機能の両立を目指す常勤社外監査役の設置は、今後ガバナンス改革を推進する企業にも参考になるであろう。
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