ASEANにおいて重要性が高まる社会的インパクト投資

野村資本市場研究所 北野 陽平

要約

  1. 昨今、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)に向けた取り組みが世界的に進められる中、ASEAN域内でも社会的課題への対応が強化されている。同域内では、ASEAN社会・文化共同体ブループリントの下で、さまざまな社会的課題への取り組みが進められている。貧困率の低下等の進展が見られる一方で、ジェンダー平等の実現等に関しては総じて改善の余地が大きく、取り組みはまだ道半ばと言える。社会的課題への取り組みのさらなる促進には、相応の資金が振り向けられることが不可欠である。
  2. ASEAN域内では、金銭的リターンに加えて、社会や環境へのインパクトを同時に生み出すことを目指すインパクト投資への関心が高まりつつある。2007~2017年に計122億米ドルの投資が行われたが、開発金融機関が累計投資額の9割超を占めてきた。民間投資家による投資は拡大傾向にあるものの、依然としてその規模は小さい。そうした中、社会的課題に取り組む組織が資金調達額を増加させるためには、債券市場を通じて、より幅広い投資家から資金調達を行うことが重要となっている。
  3. ASEAN域内では近年、社会的課題の改善に資する事業を資金使途とするソーシャルボンドへの期待が高まっている。背景には、域内各国の金融規制当局が参加するASEAN資本市場フォーラムが2018年10月、国際資本市場協会のソーシャルボンド原則に準拠する形でASEANソーシャルボンド基準を策定したことがある。また、資金使途が社会及び環境に有益な事業に限定されたサステナビリティボンドも、発行件数が徐々に増加しつつある。
  4. 今後の注目点として、第一に投資家層の裾野拡大が挙げられる。資産運用会社を中心に責任投資原則への署名機関数が増加傾向にあることに加えて、富裕層の間でサステナブル投資への関心が高まりつつある。第二に、コロナ禍を契機とした社会的課題への取り組みの加速である。コロナ禍対応を目的としたソーシャルボンドが発行されるとともに、サステナブル投資の重要性に対する投資家の認識が高まっている。インパクト投資の拡大を通じて、ASEAN諸国の持続的な経済成長につながることが期待される。
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