資本市場からの資金調達の重要性が高まるインドの再生可能エネルギーセクター

野村資本市場研究所 北野 陽平

要約

  1. インドでは、人口の増加、都市化の進展、国民の所得水準の向上により電力需要が拡大していることに加えて、温室効果ガス排出量削減の取り組みが進められる中、再生可能エネルギーの重要性が高まっている。同国では、再生可能エネルギー事業の設備容量を2022年までに175ギガワット(GW)、2030年までに450GWへと増加させるという野心的な目標が掲げられている。こうした目標を達成するためには、十分な資金調達が行われることが不可欠である。
  2. インドにおける再生可能エネルギー事業の資金調達は、国内外のさまざまな機関から行われているが、銀行及びノンバンク金融会社(Non-Banking Financial Company、NBFC)の融資が中心である。しかし、(1)銀行の再生可能エネルギー事業向け融資に対する規制、(2)銀行の高い不良債権比率、(3)NBFCの財務状況の悪化、といった問題点・課題がある。そうした中、金融機関の融資を補完するために資本市場の活用が重要となっている。
  3. 再生可能エネルギー事業向けの資本市場関連商品として、近年では特に、グリーンボンドが期待されている。インドでは、2015年にグリーンボンドの発行が開始され、2019年末までの累計発行額は100億米ドル超に達した。但し、グリーンボンドを発行できる企業は、総じて高い格付けを取得している企業に限定されていること等に鑑みると、グリーンボンド以外にも目を向けることが重要と言える。
  4. 中長期的な観点では、インフラ投資信託とオルタナティブ投資ファンドが注目される。現在、再生可能エネルギー事業向けにそれらの資本市場関連商品を活用する準備が進められている。今後、資本市場に幅広い投資家を呼び込むためには、さらなる環境整備も重要である。そうした取り組みは、単に再生可能エネルギー事業にとって有益であるだけでなく、インフラ開発の促進を通じて、インドの持続可能な経済成長にも貢献することが期待されよう。
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