日本の社債市場で発行が拡大するグリーンボンドと今後の注目点

野村資本市場研究所 富永 健司

要約

  1. 日本の社債市場においては、低金利環境等を背景として発行が増加している。2020年1~7月の国内普通社債の累積発行額は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が日本企業等の資金調達にも多大な影響を及ぼす状況下で、前年同期比14%増の約8.7兆円に達し、同年7月末時点の現存額は約72兆円と、過去最高を記録した。足下では、社債市場において、グリーンボンド等の発行が増加してきている。
  2. 国内公募社債市場におけるグリーンボンドに対して、2019年時点でプレスリリース等により確認できる先だけでも、400件近い投資表明が行われている。こうした点から、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の一環として、グリーンボンドへの投資が活発化していることが窺える。
  3. グリーンボンドの発行額上位の業種は、投資法人、不動産業、電気機器である。他方、社債市場全体における発行額上位の業種は、電気・ガス業、情報・通信業等となっている。こうした中、東北電力が2020年2月に電力会社初のグリーンボンドを発行した。社債発行の常連とも言える業種による発行が広がれば、社債市場におけるグリーンボンドの存在感が一段と拡大する可能性もある。今後、社債市場におけるグリーンボンドの業種のさらなる多様化が進むのかが注目されよう。
  4. 日本企業の負債による資金調達を見ると、歴史的に銀行借入が中心的であると言える。資金調達の選択肢として社債を発行することは、企業にとって資金調達先を分散できるといったメリットを指摘できるが、幅広い発行体及び業種による社債の活用は容易に進まず現在に至っている。グリーンボンド等の、調達資金が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債の発行がさらに浸透すれば、社債市場のさらなる拡大に繋がる可能性も期待できよう。中長期的な観点から、社債市場の変化に注目したい。
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