公的セクターのSDGs債の発展と展望
-コロナ禍での論点-

野村資本市場研究所 江夏 あかね

要約

  1. 調達資金が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債市場においては、公的セクターの発行体によるSDGs債からその歴史が始まり、市場の成長に大きく寄与してきた。世界における公的セクターの発行体(国際機関、地方公共団体、政府系機関、ソブリン)によるSDGs債の発行残高は2020年9月末時点で、約4,911億ドルと、SDGs債全体(約1兆832億ドル)の約45%を占めている。
  2. 新型コロナウイルス感染症への対応を目的とした、いわゆる「コロナ債」のうち、国際資本市場協会(ICMA)のソーシャルボンド原則(SBP)等に適合する形で発行されているコロナSDGs債の発行残高は2020年9月末時点で約381億ドルとなっている。そのうち、約6割に当たる約233億ドルが公的セクターの発行体によるものとなっている。
  3. 新型コロナウイルス感染症問題も経て、世界の環境・社会課題解決に当たり、公的セクターが引き続き重要な役割を果たすとともに、サステナブルファイナンスも通じて課題解決に取り組むことが大切であることが再認識された。今後の公的セクターの発行体によるSDGs債市場を見据えた場合、例えば、(1)パブリック・ガバナンス、(2)インパクト、(3)IR・開示、といった論点が注目を集める可能性がある。
  4. 特に、パブリック・ガバナンスの観点からは、「ガバメントからガバナンスへ」の考え方に基づき、各公的セクター発行体が真に担うべき役割を効率的かつ効果的に執行しているかといった点が、公的セクターSDGs債への投資をESGの尺度から考える際により重要になると予想される。
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