「コロナの影響」を考慮し、「コロナ後」を展望した2020年6月株主総会

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2020年6月開催の株主総会においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響を勘案し、機関投資家が議決権行使基準を一部緩和する動きが広がった。その結果、主要議案の多くで平均賛成比率が上昇したが、特に、取締役選任議案などに関係する資本効率性(ROE)基準や、剰余金処分議案などにおいて、緩和された基準が反映された。
  2. 今次総会を受けた今後の議決権行使基準の注目点に関しては、(1)独立性の高い社外取締役の増員を全ての企業に求める動きが拡大するかどうか、そして、(2)議決権行使助言会社で採用され始めた、政策保有株式の動向を議決権行使基準に反映させる動きが広がるかどうかが考えられる。
  3. また、コロナの影響を受け一時的に緩和された議決権行使基準については、(1)通常の基準に戻す時期の検討と、(2)「コロナ後」の中長期的な経営スタンスや戦略を再検討する必要があることから、投資家と企業とのエンゲージメント活動の重要性がさらに高まるであろう。
  4. コーポレートガバナンス・コードの改訂が2021年春にも見込まれる。グループガバナンスの強化、東証の市場改革における市場区分によるコーポレートガバナンス・コードの適用範囲の検討、流通株式から政策保有株式除外の検討、女性や外国人などダイバーシティの確保などは、機関投資家の議決権行使基準の見直しにも影響することが考えられる。
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