社会的課題に対応するソーシャル・ファイナンス
-英国の休眠預金の活用に学ぶ-

野村資本市場研究所 小立 敬

要約

  1. 近年、社会的課題の解決に焦点を当てたソーシャル・ファイナンスが世界的に注目されている。グローバル金融危機によって金融セクターは健全な社会の構築に向けて大きな貢献が求められるようになったことがソーシャル・ファイナンスの発展の背景にある。ミレニアル世代が登場し、社会的起業家が活躍するようになったこともソーシャル・ファイナンス拡大の一因として指摘されている。
  2. ソーシャル・ファイナンスを世界でリードする国となった英国では、政府がソーシャル・ファイナンスの市場の創設・発展を図るべくさまざまな施策を講じてきた。ソーシャル・インパクト・ボンドの開発や休眠預金を活用して社会的投資を行うビッグ・ソサエティ・キャピタル(BSC)の設立も政府のイニシアティブの下で行われている。
  3. 特にBSCの存在は重要である。BSCは社会的投資家と共同で投資を行ったり、多様なプロダクトに投資を行うなどして、ソーシャル・ファイナンス市場に資本を呼び込む役割を担っている。社会的投資のフォーカス、資金リソース、高度人材というBSCの触媒効果を通じて、英国のソーシャル・ファイナンス市場の発展にとってBSCが重大な貢献をしたことが認められている。
  4. 日本でも2016年に休眠預金等活用法が成立し、日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が休眠預金を活用した助成事業を2019年度より開始している。ウィズコロナ時代には、ソーシャル・ファイナンスがより重要な存在になると考えられる。JANPIAの役割の拡張を含めて、日本もソーシャル・ファイナンス市場の発展に向けた更なる取組みが求められるようになるのではないだろうか。
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