2021年度地方債計画
-リーマンショック時の教訓を活かした起債運営の工夫-

野村資本市場研究所 江夏 あかね

要約

  1. 2021年度地方債計画や地方財政対策は、新型コロナウイルス感染症による税収減や歳出拡大により財源不足額及び臨時財政対策債の発行予定額が急拡大する等、財政状況の厳しさを浮き彫りにする内容となった。その一方で、地方公共団体の資金繰りへの対応に加え、2020年9月に発足した菅政権が掲げる重要テーマであるデジタル社会の実現や災害対策等に関する項目が重層的に示され、地方公共団体が行財政運営の持続可能性を確保すべく、国が地方公共団体に良好に関与・支援するスタンスを改めて確認するものとなった。
  2. 地方公共団体の資金繰りの観点からは、(1)減収補填債の対象税目の拡大、(2)地方債に対する公的資金の大幅な増額確保、(3)特別減収対策債の創設及び延長、(4)公営企業における特別減収対策企業債の延長、(5)資金調達手段の多様化・資金調達環境の整備、が掲げられた。
  3. 2021年度の地方債市場について、金融市場が震源だった2008年9月のリーマンショック時と比べ、未知の病原菌が震源の新型コロナウイルス感染症問題は、その影響の全貌や収束時期を見通すことはより困難と考えられる。とはいえ、リーマンショック時の教訓を踏まえると、2021年度の起債運営でカギとなるのは、(1)発行時期の分散、(2)商品性の多様化、(3)投資家向け広報(IR)の工夫・拡充、が挙げられる。商品性の多様化の観点からは、一部の地方公共団体が近年、グリーンボンドや国内外貨建て公募地方債の発行に取り組んでいる。
  4. 新型コロナウイルス感染症の収束を見通せない中、起債運営に係る工夫を重ねることが、地方債による資金調達及び財政運営の安定性を確保するために、ますます重要になると考えられる。
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