2021年日本のコーポレートガバナンス改革の注目点

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2021年の機関投資家の議決権行使方針変更については、(1)社外取締役の選任数を2名以上から取締役会全体の3分の1への引き上げと、(2)政策保有株式の議決権行使への反映が主な論点であろう。(1)については、コーポレートガバナンス・コード改訂議論の状況などから、2021年から2022年にかけ引き上げる機関投資家が増えると考えられる一方、(2)は、議決権行使への反映よりも引き続きエンゲージメントの主要な論点として扱われることが多いと考えられる。
  2. 2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、議決権行使で資本効率性基準や剰余金処分議案に関する基準を一時的に緩和した機関投資家が多かった。現状、感染拡大の収束等が進んでいないため、この措置は2021年も継続する可能性が高いと見られる。
  3. 2021年春にも再改訂が予定されているコーポレートガバナンス・コードにおいては、2022年に実施される東京証券取引所(東証)の市場区分見直しで、プライム市場に対しより高いガバナンス水準が求められる方向であることから、社外取締役の増員等が検討されている。また、急速な経営環境の変化等に対応するため、取締役や経営陣の多様化(ダイバーシティ)の促進と数値目標の設定なども議論されている。
  4. 東証は2022年4月に市場区分を変更し、「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場体制とするとともに、それぞれの市場のコンセプトを明確化する。一方、TOPIX(東証株価指数)の構成は市場区分と分離される。また、流通株式や浮動株比率の計算では、いわゆる政策保有株式を除外するため、昨今の政策保有株式に対する厳しい見方と合わせ、緩やかな持ち合い解消をさらに促すと見込まれる。
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